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UTEcon主催「データ駆動型社会とアカデミア」ウェビナーを開催

 11月8日、東京大学エコノミックコンサルティング(株)(文京区、以下、UTEcon)は、国立大学法人東京大学、(株)日本経済新聞社、(株)東京商工リサーチと共催で「データ駆動型社会とアカデミア」ウェビナーを開催した。
 このうちパネルディスカッションについては「ビジネス課題解決のためのデータ活用方法」をテーマに行われ、モデレーターはJapan Digital Design(株)(中央区)代表取締役の河合祐子氏が務めた。パネリストには、IGPI グループ会長でUTEcon社外取締役の冨山和彦氏、東京商工リサーチ代表取締役社長の河原光雄、日本経済新聞社の渡辺洋之専務取締役、一橋大学大学院経営管理研究科准教授でUTEconチーフエコノミストの宮川大介氏が参加した。


データ利用の目的と課題は

 モデレーターの河合氏が、デジタルデータ蓄積量の劇的な増加を背景に、データ利用の有用性が増している点を指摘。世界と比較した日本のデータ利用の現状、人材不足をはじめとする日本の特徴的な課題について説明し、「何のためにデータを利用するのか」、「利用にあたっての課題は何か」と今回のメインテーマを提起した。
 宮川氏は、データの整理と類型化の必要性に言及し、効果的なデータ利用のためには「計測、予測・検知、因果関係の把握、(データの利用方法の)デザイン」の4点が重要だと意見を述べた。
 河原は、企業調査におけるデータの位置づけの変化を踏まえ、これまでは倒産に代表されるリスクを中心に個社レベルで見てきたが、これからは企業が今後どう展開していくかの予測も重要になる。そのためにはデータが必要であると述べ、これまでの取り組みとして、TSRのような外部のデータベンダーのデータに自社のデータを加えて分析することで、自社の取引審査モデルの高度化やリース業であればリース料の最適料率の算出などもできると紹介した。
 また、海外企業については商習慣の違いもあるため、現地のデータを使って審査モデルの構築とスコアリングをすべきで、ここでもやはりデータが重要になる。
 渡辺氏は、上場審査の初期段階で利用される売上予測のサービスを例に挙げ、すでにデータとAIの利用で不正会計の予測・検知ができる段階まできていると語った。

ウェビナー

‌パネルディスカッションに参加するTSR社長・河原

企業の体制そのものの変革も必要に

 「データの利用にあたっての課題」では、冨山氏が多くの企業でDXがIT化の延長になっていると指摘。データ自体を価値に反映するには、アカデミアやIT企業のデータに関する豊富な知見を上手く使うべきで、そのためには会社の体制そのものも変える必要があると述べた。
また、データ提供側の課題として、渡辺氏からデータの信頼性や蓄積された量の問題が挙げられた。
 一方、データ利用者側の観点では、宮川氏は問題の仕分けが重要と指摘。解決したい課題へのアプローチ方法の検討は研究者の得意とするところなので、アカデミアが力を発揮できる場ではないかと語った。また、分析が上手くいかない場合、自分の専門外の業界の知識や知見を取り入れることも、課題の解決に繋がるのではないかと提起し、機械学習による予測と人間による直感を含めた判断を場面によって使い分ける必要性にも言及した。
 データ活用に必要な人材についての質問では、渡辺氏が「データ利用の経験はもちろんだが、加えて数字への関心も必要だ」と指摘。まずは数字に関心がありデータも読める人材を増やし、その上でプロフェッショナルやデータテクノロジストのような人材にも参加してもらうことが重要になると述べた。

DXは実務やアカデミアから生まれる

 河原は、簡易なデータ利用の実際の事例として、「代表者が高齢で後継者がいない約120万社の企業のうち、黒字の企業が約60万社ある」とのデータをもとにM&Aニーズに辿り着いた企業のケースについて説明。重要なのはそのデータを使って何をしたいかという目的であり、やりたいことさえわかれば、それに沿ったデータの使い方ができると述べた。
 冨山氏は何事も内製したがる日本企業の傾向に触れたうえで、DXは実務やアカデミアから生まれるものだと指摘。オープンイノベーションによる外部との交流の重要性を語った。
 本来、オープンイノベーションというのは使えるものを使うという発想であり、常に流動的に変化する最先端のダイナミズムをどう利用できるかに重点が置かれる。特に、「最先端」の人々はヒエラルキー(階層的組織構造)と意思決定の遅さを嫌う。だからこそ、「必要に応じ会社の体制を変える必要がある」と再度強調し、この切り替えがうまくいけば、大企業よりも意思決定の早い中小企業やベンチャー企業の方が身軽に転換していける可能性があると述べた。
 また、データ活用を「借り物競争」に例え、外部のデータ分析のエキスパートの持つ知見を上手く利用することの重要性を示唆した。

ウェビナー

‌パネルディスカッションの登壇者

今後活用が期待されるデータ

 ディスカッションを踏まえ、宮川氏は「データ活用が進むなかで企業側の解決したい課題へのアプローチ方法の設定は上達していく。そのなかで研究者側も進歩しなくてはならない」と述べ、産学は知見を「借り」「借りられる」関係が理想だとした。
 また、ビジネスに関しては、点と点を繋ぐデータとして、特に非上場企業の取引関係データが重要だと語った。
 ディスカッションの最後に河合氏が、「データを上手く活用するためには、元々のビジネスモデルを根底から見直していく必要性がある」と言及。「データ」という言葉に踊らされるのではなく、地に足をつけ、プロの力を借りながらデータをうまく活用していくことが重要だと締めくくった。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年11月16日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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