• TSRデータインサイト

上場企業の雇調金 10社が計上額100億円超え 上場企業「雇用調整助成金」調査

 新型コロナ感染拡大に伴う雇用支援で、2020年4月分から適用された雇用調整助成金(以下、雇調金)の特例措置制度を受給した上場企業が、2021年9月末で829社に達したことがわかった。
 上場企業(3855社)の21.5%を占め、前回調査(2021年7月末)の814社から15社増えた。
 雇調金計上額が判明した737社の合計は5829億9390万円にのぼり、7月末から639億4940万円(12.3%増)増えた。調査を開始した2020年11月末の計上額は合計2414億5420万円で、10カ月間で2.4倍(141.4%増)に達した。
 また、2020年4月以降に本決算で雇調金を計上し、かつ2期連続で計上した企業は289社あった。
 受給企業829社を業種別でみると、製造では受給を終了した企業が散見されるが、鉄道や航空といった交通インフラ、外食、サービス、小売などの対面サービスを中心に、コロナ前の水準に需要や業績が回復しない企業で受給が長期化し、計上額を押し上げている実態が浮かび上がる。
 10月には緊急事態宣言が全面解除され、外食やサービス、観光など、コロナ禍で痛手を受けた業種では本格稼働への期待も高く、雇調金受給は緩やかに縮小する可能性も出てきた。

  • 本調査は、雇用調整助成金の受給、または申請を情報開示した上場企業を対象に、2020年4月1日~2021年9月30日で金額、および活用や申請を開示資料に記載した企業を集計した。今回の調査で10回目。
     

【計上額別】「100億円以上」が10社

 829社の計上額別は、最多は1億円以上5億円未満283社(構成比34.1%)だった。次いで、1億円未満が277社(同33.4%)で、ともに3割を占めた。
 7月末との比較では、増加は1億円以上5億円未満(273社→283社)、 5億円以上10億円未満(59社→62社) 10億円以上50億円未満(87社→93社)、 50億円以上100億円未満(9社→12社)、100億円以上(9社→10社)。
 一方、社数の減少は、1億円未満(286社→277社)だった。中堅規模の追加計上などが相次ぎ、1億円以上が増加した。

202111雇調金②

【業種別】小売(外食含む)の利用率が45%超

 829社の業種別は、製造が327社(計上額1115億2470万円)で最多だった。
 次いで、外食を含む小売159社(同1248億7620万円)、観光などのサービス154社(同1107億1540万円)と続く。
 業種別上場企業数を母数とした利用率で見ると、小売が45.8%(347社中159社)と群を抜き、次いで運送39.2%(125社中49社)、サービス28.8%(533社中154社)と、新型コロナが直撃した業種で申請企業が目立つ。製造は21.9%(1,487社中327社)だった。
 計上額では、航空会社・鉄道を含む運送(49社)が1906億7830万円で最も多かった。

【連続計上の業種別】運送、小売、サービスに集中

 特例措置が開始された2020年4月以降に雇調金を計上し、かつ2021年度に入り、2期連続で計上した企業は289社あった。受給企業829社の3割超(34.8%)で、受給した3社に1社が連続計上している。
 連続計上の業種別では、製造の91社が最多。構成比では、運送(29社、59.1%)、小売(72社、45.2%)、サービス(60社、38.9%)の3業種が3割超の高水準だった。
 製造は、2020年春の緊急事態宣言で操業を一部停止したが、その後、通常稼働に戻し1度だけの計上にとどまるケースが多いが、BtoC業種はコロナ禍の影響が長引いているようだ。

202111雇調金③


 雇調金の特例措置期間内に受給が判明した上場企業は829社を数え、計上額は5829億9390万円と6000億円に迫る。累計で100億円超を計上した企業も、10社に増えた。業種では10社中6社が運送(交通インフラ)、3社がサービス(いずれも観光関連)と、コロナ禍の行動制限が業績悪化を招き、従業員数が多い企業が目立つ。
 雇調金の受給は、コロナ禍が直撃した業種とそれ以外での二極化が進む。特例措置期間に2期連続で雇調金を計上した企業は289社で、受給企業全体の34.8%にのぼり、運送、小売(外食含む)、サービスは特に高水準で推移する。一方、製造や卸売、情報通信は2020年度だけの計上にとどまり、業種間の深刻度の差は広がっている。
 現行の特例措置は12月末で終了する。行動制限の緩和で、受給規模が大きかった交通インフラや小売、観光などでは、従業員削減などのリストラ策と同時に、業績回復に期待をかけている。申請基準を含む特例措置の見直しも視野に入るなか、BtoC関連の受給規模が縮小するか注目される。

202111雇調金①

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ハウスメーカーの倒産、26年上半期9割増の衝撃 ~ 踏み切れない抜本再生、施主の権利保護も重要 ~

コスト高や人手不足などでハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産が急増している。2026年上半期(1-6月)は118件発生し、前年同期から約9割増えた。

2

  • TSRデータインサイト

倒産と無縁の税理士業界に異変、2026年上半期は4件発生 粉飾は詐欺罪も、コンプラ違反と健康問題がリスクに

過去、税理士事務所の倒産は半年で、概ね1~2件にとどまっていた。景気状況に相関せず、倒産と無縁の税理士業界だったが、2026年上半期(1-6月)はすでに4件発生した。

3

  • TSRデータインサイト

エブリライブの元従業員、「突然の解雇」に困惑

6月初旬から連絡が取りにくくなっているライブ配信のエブリライブ(株)(東京都港区)が、同時期に大半の従業員を解雇していたことがわかった。  解雇を通知の際、エブリライブ側は従業員に「破産予定のため」と説明したという。解雇された元従業員が東京商工リサーチの取材に応じた。

4

  • TSRデータインサイト

2026年上半期「医療機関」倒産 増勢続く 上半期で2番目の38件、「後継者難」は最多

医療機関の倒産が止まらない。2026年上半期(1-6月)に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は、38件(前年同期比15.1%増)と大幅に増加した。上半期では、2006年以降の20年間で、2024年と2025年の33件を上回り、2009年の39件に次ぐ2番目の高水準となった。

5

  • TSRデータインサイト

愛媛県のいよぎんHDと愛媛銀が経営統合へ  メインバンク取引社数 金融Gでは国内21位に

愛媛県内にある企業のメインバンクシェア57.5%(県内メインバンク取引社数1万966社)の伊予銀行を傘下に持ついよぎんホールディングスと、県内2位で18.5%(同3,542社)の愛媛銀行が、7月24日開催の取締役会で経営統合を付議することを発表した。

TOPへ