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【破綻の構図】常総コンクリート(株)ほか4社 域内で低迷が続いた需要、生コンの空白地帯への対応も浮上

 千葉県北東部や茨城県南部を営業エリアに生コンの製造を手掛けていた常総コンクリート(株)(TSR企業コード:320440559、銚子市)が9月6日、関連会社4社とともに東京地裁へ破産を申請した。負債総額はグループ5社合計で12億700万円だった。
 高度経済成長期の1964年に工場の操業を開始。地域の建設需要の高まりとともに地区上位の生コン業者の地位を築いたが、近年は不振が続いた。運搬時間の制約がある生コン業者は、営業範囲内の工事案件の多寡に左右される。当グループもまた、域内の工事減少に抗えず、資金繰りが限界に達した。


千葉県北東部~茨城県南部で高いシェア

 グループ5社は地域の生コン業者では知られた存在だった。 製造は常総コンクリートが持つ2工場(銚子市、神栖市)、関連会社の行方コンクリート(株)(TSR企業コード:282075496、行方市)の3拠点で手掛け、関連会社が販売や材料仕入をなどを担当した。
 地元業者から大手ゼネコンに至るまで販売ルートは幅広く、千葉県北東部から茨城県南部をカバーし、特に銚子市内での生コン供給シェアは圧倒的な規模を誇った。

常総コンクリート

‌常総コンクリートの銚子工場(TSR撮影)

需要が長期低迷、復興需要の効果も限定的

 需要は建設市況に左右される。公共事業の削減やリーマン・ショックなどで、需要は往時の勢いをなくし、業績はジリ貧が続いた。
1990年代に約17億円をあげていた売上高(常総コンクリート単体)は、2000年代に10億円を割り込み、2011年10月期の売上高は6億6,000万円まで落ち込んだ。
 こうしたなか、久々に沸いたのが東日本大震災の復興需要だった。千葉県北東部の海岸線は震災で大きな津波被害を受け、復旧工事だけでなく防災工事の案件も増加した。
 だが、復興関連の工事は一時的な特需にとどまった。翌年度以降は、再び売上はもとに戻り、近年は4億~5億円台で低調に推移した。

立ちはだかる「90分の壁」

 生コンはその性質上、工場で製造後90分以内に現場まで届けることが日本工業規格(JIS規格)で定められている。このため、地理的な営業の範囲は、工場を中心にミキサー車で撹拌(かくはん)しながら90分以内で運搬可能な円の中に限られる。これが、鉄骨や木材など、ほかの建設資材とは決定的に異なる点だ。
 「90分の壁」といわれる業界独特の制約は同時に、営業上のテリトリーでもある。このテリトリーがあるため適度に競合を避け、新規参入を防ぎ、小規模経営でも共存共栄の道を歩むことができた。だが、これはあくまでテリトリー内に充分な仕事量があることが前提となる。域内の需要が無くなれば、他所で稼ぐことはできないため、諸刃の剣にもなる。
 復興需要が膨らんだ東北には当時、全国各地からゼネコンを筆頭に建設業者が流れ込み、資材業者も拠点を設け、受注獲得に努めた。しかし、生コン業者の参入は容易ではなかった。他所で生産して運べばいい他の資材と違い、工場から建てなければならず、多額の投資が必要となるからだ。
  一時的な特需のために設備投資に踏み切る業者はなく、当時は被災地の復興工事で生コン不足が深刻化した。常総コンクリートも、それまでの営業範囲の外に出ることはなく、復興需要の業績アップ効果も限定的だった。

常総コンクリート

コロナ禍でさらに経営悪化、2度の動揺も

 その後も工事案件がますます先細り、生コン需要が減少。2013年以降は千葉県産業復興相談センターを通じ、取引金融機関から返済リスケなどの支援を受けていた。
 また、新型コロナウイルス感染拡大の影響も大きかった。「工事の中止・延期等が相次ぎ、その結果、コロナ前に比べて30%から40%程度の売上減少に陥り、資金繰りがひっ迫する事態となった」(破産申立書)。
 2021年に入ると4月、5月の月末には連続して不渡りの危機を迎えた。特に、5月末はグループ全体で約4,000万円不足し、一旦は東京地裁に破産を申請した。ところが、何とか伝手をたどって資金調達できたため、即日取り下げたという経緯がある。資金繰りはまさに綱渡りだった。
 もっとも破産の取り下げは、すでに取引先に事業停止を通知したあとだった。すぐに撤回する旨を知らせたが、深刻な資金難を露呈し、信用不安が拡大した。
 結局、その後も資金繰りと事業環境は改善することなく3カ月後の9月1日、手形決済をクリアできず2度目の破産申請となった。


 生コン業者が破たんし、生コンの空白地帯が生まれると、地域の建設業の根幹が揺らぐ。当社のケースでも「グループ3工場からしか納品できないエリアが存在しているため、早急に後継事業者を探索し、工場取得を打診する必要がある」(申立書より抜粋)事態という。生コンの特殊な市場性を考慮すると、地域経済の維持にも様々な支援が必要になる。
 東京五輪後の需要減が懸念されていた建設業だが、積み上がった都市部の再開発なども始動し、業界の見通しにある種の楽観論が漂いがちだ。倒産も小康状態が続いている。
 とはいえ、工事案件が集中する都市部か、それ以外の地域か、大手か中小かなどでも取り巻く経営環境は異なる。大都市の大型開発とは無縁で、長期低迷が続く地域もある。当然、そうした地域を営業地盤とする当社のような業者は影響が直撃する。
 業界環境はまだら模様だ。大手企業の好業績に惑わされず、地域の状況や業界の地殻変動を観察することが重要だ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年10月29日号掲載予定「破綻の構図」を再編集)

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