• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

【取材の周辺】コロナ破たんの高止まりと「隠れコロナ破たん」

 新型コロナウイルス感染拡大の関連支援で今年1~8月の企業倒産は3,986件(前年同期比26.9%減)と歴史的な低水準が続く。ただ、倒産取材の現場では、コロナ禍から逃れられずに体力を疲弊した企業が多い。倒産の現場に立つと、数字に表れない厳しい現実が浮かび上がる。9月の新型コロナ破たんは160件で、月間最多を記録した(負債1,000万円未満を含む)。
一方、コロナに隠れた破たんも目立つ。コロナ禍が日常となり、コロナの影響が深刻でも、そう感じなくなっているのかもしれない。

「高齢化」が破産のきっかけ

 都内で広告などの制作、印刷を手掛けていた老舗企業は今年9月、破産開始決定を受けた。
創業当初は、写植を手掛けていたが、時代とともに受注が先細りとなり、新たに広告制作、印刷にシフトした。だが、受注は伸び悩み、経費負担だけが重くのしかかる。負債を残したまま2014年頃に事業を停止し、会社を休眠状態にした。
この間、代表はパートタイマーで生計を立てていたという。ところが、コロナ感染者数が増加する報道に触れるたび、感染への恐怖が強まった。さらに、寄る年波(としなみ)には抗えない。高齢になっても会社が休眠したままでは関係先だけでなく、家族にも迷惑をかける。そんな思いが頭をよぎり、会社の債務整理を決断したという。
直接のコロナ破たんではないが、長引くコロナ禍が代表に破産への背中を押した。

口を閉ざす関係者

 デイサービス運営の介護事業者が9月、破産開始決定を受けた。周辺への取材では、夏まで事業を続けていたという。
ところが、会社の事情を知る人物は倒産に至った事情になると、途端に口をつぐむ。現地の建物は寂れ、随分長い間、人の出入りがないような印象だ。破産を告げる張り紙はない。近隣では数カ月前に「廃業したようだ」と話す。ただ、その原因やコロナの影響などを訊ねても誰も答えようとしない。
高齢者は感染リスクが高く、入居者の減少で破たんに追い込まれる介護事業者もある。この会社もコロナ禍で経営維持が難しく、破産に至ったのだろうか。
長引くコロナ禍で、裏付けは取れないが、コロナ破たんの可能性を示唆する企業が後を絶たない。支援を受けながら、結局破たんした自責の念があるのか。

 10月1日、全国で緊急事態宣言とまん延防止重点措置が解除された。街中はすでに以前の賑わいが戻ってきた。ただ、失われた時間は取り返せない。コロナの“ど真ん中”で苦労している企業は多い。一部で語られ出した“アフターコロナ”と、今も続く現実をどう織り込むのか。倒産の数だけ、想いが残る。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年10月7日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ