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しんきん地域創生ネットワーク・髙田社長 独占インタビュー(前編) ~「販路拡大の相談は信金へ」を目指す ~

 新型コロナウイルス感染症拡大で景気への影響が懸念されるなか、規制緩和を背景に金融機関が「地域商社」を設立する動きが目立つ。地域商社は、停滞する地域経済の活性化とともに、金融機関の新たな取引先支援としても注目を集めている。
 2021年7月、信用金庫のセントラルバンクである信金中央金庫(信金中金)は100%出資で、しんきん地域創生ネットワーク(株)(略称:しんきん地域ネット、TSR企業コード:380701340、東京都中央区)を設立した。
 「しんきん」に求められる地域商社機能と今後の展開について、同社の髙田眞社長に話を聞いた。


―地域商社事業の目的、設立の経緯は

 親会社の信金中金は全国254ある信金の中央機関で、これまでも信金やその取引先を対象としたサービスを展開してきた。
 当社設立の経緯は大きく2つ。1つは、企業の資金ニーズがコロナ前から減退していたこと。預金業務や貸金業務など、これまでの金融機関のサービスでは、新たな資金ニーズは生まれない。また、取引先からも本業支援を求める声が大きくなっている。
 金融機関の本業支援においては、販路拡大が重要なテーマの1つである。これまで金融機関が取り組んできた販路支援は、商談会やマッチングなどの販売機会の提供が中心だった。他方、商品開発やプロモーションなど、取引先の課題は多岐にわたる。資金ニーズは、売上が増加し、設備投資の必要性が出てきた時に生じるものであり、従来のような販売機会の提供だけではそこまで到達しづらい。
 売上を伸ばし、資金ニーズが生まれるまでのサイクルを循環させるためには、もう一歩踏み込んだ販路拡大の支援が必要となる。

takada

‌インタビューに応じる髙田社長(撮影の際にマスクを外して頂きました)

もう1つは、各信金の地域課題に対する向き合い方が大きく変わってきたこと。都市部から距離が離れるほど、人口減少が深刻であり、地域金融機関の経営基盤も縮小してしまう懸念が大きいため、信金の経営層も危機意識が高まっている。自分たちが主体的に地域課題の解決に関与しないといけないという認識を持つ信金が増えてきた。
 とりわけ販路拡大にはもう一歩踏み込んだ支援が必要であり、地域課題への問題意識が高まっていたところに規制緩和のタイミングが重なり、金融機関が100%出資の子会社としてフィンテック企業や地域商社を設立できることとなった。
 それぞれの信金で独自に(地域商社を)設立するケースも出てくると思われるが、まずは業界に地域商社機能を提供できるよう、信金中金が主体となり当社が設立された。

-社内や人員の体制は

 現在は役職員16人全員が信金中金からの出向者だ。今後、プロパー社員も増やしていきたい。将来的には、経験のあるスタッフ(中途採用を含む)が多様な課題に立ち向かい、出向者がマネジメントする体制にしたい。

-スタートした地域商社事業の取り組みとは

 当社の事業内容は、地域商社事業と、地域創生コンサルティング事業の2つを柱としている。
 地域商社事業は、これまでの商談会やビジネスマッチングによる販売機会の提供に加え、新たなサービスの提供を目指している。具体的には、商品のブラッシュアップ、マーケティング、プロモーションといったモノを売るプロセスに積極的かつ丁寧に関わっていく。
 まず手始めに、全国の信金の取引先からの相談に無料かつオンラインで対応することとした。売り方の問題からマーケティングの手法まで、何でも相談していただけるようアナウンスしたところ、サービス開始直後から相談が殺到し、問い合わせも増えている。
 また、様々な業種・業界から相談が来ることを受けて、色々な分野に精通した有識者をアドバイザーとして招聘することとした。アパレル関係なら専門の人を別途リモートで繋ぐ、食品関係は見た目だけでなく、味も大事なのでシェフに繋ぐなど、少しずつではあるが有識者を増やしており、色々な相談に対応できる体制の構築に向けて取り組んでいる。
 今後は、この無料相談を信用金庫業界の新しいブランド・付加価値にしたい。全国の中小企業に「販路拡大の相談は信金」というイメージが定着できるよう頑張っていきたい。

-営業代行にも着手している

 昨今、多くの企業がEC販売に取り組んでいるが、掲載商品やターゲットを選定せずに出店したところ、売上が伸びず、過大なコストを負担し続けるケースが多いとの話を聞く。実店舗においても、主要顧客層に応じた商品群や価格帯の見直しが必要なケースも多い。
 人口の減少やインターネットが普及した情報化社会を背景に、中小企業も、作り手志向のプロダクトアウトから、買い手志向のマーケットインへ発想の転換が求められている。
 こうした状況で、当社では、無料相談を通じて販売戦略の相談に応じているほか、消費者ニーズを把握しているバイヤーへの営業代行にも応じている。
 営業代行では、当社と連携している100社以上のバイヤーに、中小企業の商品を代行して持ち込む。中小企業では、営業専担者が不在であるほか、経営者の人脈など営業ルートが限られるケースも多い。当社が代行することで、中小企業は、首都圏への訪問時間や費用などコストを抑えたうえでバイヤーの声を聞けるほか、商談機会にも繋がる。
 他の地域商社でも同様の取り組みはできるが、当社は現在、バイヤーの専門分野など定性情報の把握に努めている。理想は、無料相談を受けた際、必ず頭に相手方(紹介すべきバイヤー)が浮かぶようになること。定性情報を積み上げていくことにより、他の地域商社との差別化もできるはずだ。
 また、単品ではなかなか売ることが難しい技術や商品も、別に相談に来た人の技術と組み合わせれば、これまで日本になかったような商品や、日本に需要がなくても海外での需要に応えられる商品になる可能性もある。
 無料相談を通じて、様々な課題を聞いているからこそできるソリューションを提供していきたい。

(続く)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年10月1日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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