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【破綻の構図】(株)マリーン5清水屋 百貨店離れによる低迷、「コロナ禍」と「代表逝去」が追い打ち

 また、山形の老舗百貨店がシャッターを下ろした。  酒田市の地場百貨店「マリーン5清水屋」が7月15日、店舗営業を終了。運営会社の(株)マリーン5清水屋(TSR企業コード:211015466、酒田市)は、破産申請に向けた準備を進めている。
 1950年、清水屋百貨店の屋号で創業した。市内の中心部に位置し、ランドマークとして繁華街の中核を担ってきた。だが、中心部の空洞化や消費者離れから集客力が低下し、業績低迷が続いていた。
 新型コロナウイルス感染拡大で一段と業況が悪化したうえ、今年5月には社長の逝去も重なり事業継続を断念。負債総額は約10億円が見込まれる。


 「マリーン5清水屋」。一風変わった屋号は、この百貨店が歩んだ紆余曲折の道を示している。  前身は縫製工場を経営する地元実業家が始めた「清水屋百貨店」だった。朝鮮戦争の特需に沸く1950年に開業し、高度経済成長に乗じて酒田市の繁華街「中町」の顔として認知された。
 1976年10月、市内中心部で発生した「酒田大火」では1774棟もの建物が焼失するなか、ぎりぎりで被災を免れた。そして、大火後の市街地復興の先頭に立った。
 ただ、事業規模では同じ山形県の地場百貨店で、酒田市内にも支店を展開していた大沼(2020年1月破産)の後塵を拝した。巻き返しを図るため、1982年、大手スーパーのダイエーと業務資本提携を締結し、出資受け入れを決めた。
 当時、ダイエーは流通業の国内トップ企業で、地場百貨店やスーパーなどと提携し、拡大戦略を進めていた。1994年、清水屋はダイエー傘下で、福島県が地盤の百貨店(株)中合(福島市)と合併し、店名は「中合清水屋店」へと変わった。

マリーン5清水屋

‌マリーン5清水屋

ダイエーのリストラ策で一時は閉店も決定

 しかしその後、ダイエーの経営悪化がグループにも暗い影を落とした。ダイエーが経営再建を模索するなか、「中合清水屋店」自身の業績も振るわずリストラを断行、2012年2月に営業終了を発表した。
 一旦は閉店が決定したが、営業存続を望む地元の声を受けて事業を引き継いだのが(株)マリーン5清水屋だった。もともとはビル管理会社の「(株)マリーン5」だったが、新店名を「マリーン5清水屋」として再スタートを切った。
 社長には、旧(株)清水屋に入社し、取締役などを歴任したA氏が復職する形で就任。株式の過半数をA氏が保有し、地元企業が大株主に名を連ねた。
 経営ビジョンは「お客様に必要とされる庄内唯一の百貨店」。多くの支援を受けて営業継続にこぎ着けた経緯は、市民に明るい話題を振りまいた。

長引く不振に襲ったコロナ禍と代表の逝去

 だが、再オープンはしたものの、中心市街地の空洞化は避けられず、百貨店離れが進み業績は低迷した。
 中合清水屋店時代の1990年代後半、約50億円あった売上高もここ数年はテナント撤退による集客低迷が響き、20億円台から10億円台に激減。そして、2020年はコロナ禍で外出自粛や三密回避の広がりで地域の祭りやイベントが軒並み中止になった。これで客足はさらに遠のき、市が実施した消費刺激策の効果も限定的だった。
 追い打ちをかけるように2021年5月、A社長が急逝した。
 A社長の年齢は80歳代半ば。新会社での経営を一手に担っていたが、同時に事業承継リスクも抱えていた。A社長の逝去後、1カ月以上にわたって後任が決まらなかったのは、A社長の存在感の大きさだけでなく、深刻な経営事情も推察された。
 社長不在が長引くに連れ、取引業者などから「営業継続は難しいのでは」と危惧する声がもれ始めたが、その予想はほどなくして的中することになる。
 長期の低迷に加えてコロナ禍での来店客の落ち込み。そして、経営の中心的存在を失った老舗百貨店は、ついに事業継続の断念に追い込まれた。後任社長を決め、閉店と破産による整理に踏み切った。

マリーン5清水屋


 マリーン5清水屋は、日本百貨店協会に加盟していなかったが、市民には大沼とともに地域密着の地場百貨店と受け止められていた。
 だが、今や2社とも経営破たんし、山形県は数少ない百貨店空白地だ。
 また、かつて経営をともにした中合も2020年8月、最後の1店の福島店を閉店し146年の長い歴史に幕を下ろした。
 消費者行動の変化に始まり、事業承継問題、そこに襲いかかったコロナ禍と、マリーン5清水屋の歩みは、流通業や日本企業が抱える問題の縮図にも重なる。
 百貨店離れは、多様な流通チャネルの登場や高級ブランドの自社展開などで加速している。そこに襲い掛かったコロナ禍は、その弱点をあぶり出したに過ぎない。
 かつて地域経済の中核に位置した百貨店は、いまや一番の集客が“閉店セール”と揶揄される。本質を示すこの状況から脱却できないかぎり、再生の道は遠く険しい。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年8月12日号掲載予定「破綻の構図」を再編集)

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