旅行業倒産の約9割が新型コロナの影響を受ける(2021年1-7月)
2021年1-7月の旅行業倒産(負債1,000万円以上)は累計19件(前年同期比11.7%増)で、3年連続で前年同期を上回った。このうち、新型コロナ関連倒産が17件(構成比89.4%)と約9割を占め、時間の経過とともにコロナ禍の影響が深刻さを増している。
新型コロナウイルスの感染拡大は入出国規制や緊急事態宣言の発令で、国内外の人の移動を大幅に制限し、旅行業界に大打撃を与えた。コロナ禍の支援策として政府は種々の融資や返済猶予などの資金繰り支援のほか、持続化給付金や雇用調整助成金などを打ち出してきた。
さらに、政府は旅行業への支援策として2020年7月、「GoToトラベル」キャンペーンを開始した。しかし、同年11月に新型コロナ感染の第三波が襲来し、キャンペーンは停止に追い込まれた。キャンペーンの実施期間が短く、対象が国内旅行に限られたこともあり、大手旅行会社は軒並み赤字に追い込まれ、早期・希望退職の実施に踏み切った企業も現れた。
2021年に入っても新型コロナ感染の勢いは収まらず、緊急事態宣言の発令と解除が繰り返され、8月は新規感染者数の最多更新が連日続いている。
旅行業の倒産は、資金繰り支援策で記録的な低水準に抑えられ、2020年(1-12月)は過去20年間で2番目の低水準(26件)だった。だが、売上が回復しないままの支援効果にも息切れがみられ、2021年は増勢を強めている。現在のペースで推移すると、年間倒産は前年を上回る可能性が高まっている。
新型コロナ関連倒産が約9割
2021年1-7月の旅行業倒産は累計19件(前年同期比11.7%増)で、3年連続で前年を上回った。
一方、負債総額は18億4,700万円(同93.6%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。前年6月に民事再生法の適用を申請した(株)ホワイト・ベアーファミリー(大阪府、負債278億円)の大型倒産が発生、反動で大幅に減少した。
2021年1-7月の旅行業倒産のうち、コロナ禍に伴う影響が一因となった倒産は17件にのぼり、全体の約9割(構成比89.4%)を占めた。新型コロナ関連倒産が初めて確認された2020年2月から12月までの旅行業倒産は23件だったが、新型コロナ関連倒産は7件(同30.4%)と3割にとどまっていた。コロナ禍の長期化で様々な支援効果も薄らぎ、旅行業界への影響が色濃くなっている。
負債額別 1億円未満が約9割
負債額別の最多は、1千万円以上5千万円未満の9件(前年同期比12.5%増)で、全体のほぼ半数(構成比47.3%)を占めた。次いで、5千万円以上1億円未満が8件(同42.1%)で続き、負債1億円未満の小規模倒産が全体の約9割(同89.4%)を占めた。一方で、1億円以上は2件(前年同期比50.0%減)にとどまり、半減した。
小規模業者には経営体力に乏しく、海外旅行に特化した業者が含まれ、コロナ禍の長期化に耐えられなくなった倒産が増えている。
原因別 不況型倒産が約9割
原因別の最多は、「販売不振」の16件(前年同期比23.0%増)で、旅行業倒産の8割(構成比84.2%)を占めた。コロナ禍の業況悪化を原因とした旅行業者が多い。
このほか、「既往のシワ寄せ」と「他社倒産の余波」、「事業上の失敗」が各1件。
『不況型倒産』(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は17件で、旅行業倒産の約9割(構成比89.4%)を占めた。
従業員数別 5人未満が8割
従業員数別では、5人未満が16件(前年同期比60.0%増)で最多。旅行業倒産の8割(構成比84.2%)を占めた。そのほか、10人以上20人未満が2件(前年同期ゼロ)、5人以上9人未満が1件(同5件)。 前年同期に各1件発生した20人以上50人未満と50人以上300人未満の倒産は、発生がなかった。
地区別 9地区全てで倒産が発生
地区別では、9地区全てで発生(前年同期6地区)した。最多は関東7件(前年同期7件)で、旅行業倒産の約4割(構成比36.8%)を占めた。次いで、中部(前年同期2件)、近畿(同3件)、中国(同2件)、九州(同2件)が各2件で続く。