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2021年上半期(1-6月)旅行業の倒産状況調査

 2021年上半期(1-6月)の旅行業倒産は、件数が18件(前年同期比20.0%増)で、3年連続で前年同期を上回った。年間では2014年(37件)以来、7年ぶりに30件台に達する勢いをみせる。
 負債総額は17億5,000万円(前年同期比93.9%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。前年は、旅行業では平成以降最大の倒産((株)ホワイト・ベアーファミリー、大阪、負債278億円)が発生し、大幅な反動減となった。負債10億円以上の倒産が発生せず、小・零細規模が中心だった。
 新型コロナウイルス感染拡大に伴う業況悪化を一因とする倒産は16件で、全体の約9割(構成比88.8%)を占めた。従来より業績不振のところへ「新型コロナ」禍の影響が追い打ちをかけた状況が透けてみえる。

旅行業倒産

 原因別では、「販売不振」が15件(前年同期比36.3%増)で、全体の8割(構成比83.3%)を占めて最多。そのほか、「他社倒産の余波」(前年同期1件)と「既往のシワ寄せ(赤字累積)」(同1件)、「事業上の失敗」(同ゼロ)が各1件。
 形態別では、破産が16件で約9割(構成比88.8%)を占めた。
 資本金別では、1千万円以上5千万円未満が7件(前年同期8件、構成比38.8%)で最多。次いで、5百万円以上1千万円未満が4件、1百万円以上5百万円未満が3件、5千万円以上1億円未満と個人企業他が各2件だった。
 負債額別では、1千万円以上5千万円未満が9件(前年同期6件)で、半数(構成比50.0%)を占めた。次いで、5千万円以上1億円未満が7件(前年同期5件)で続く。10億円以上の倒産は発生しなかった(同1件)。
 従業員数別では、5人未満が15件(前年同期比87.5%増)で最多。構成比(83.3%)は8割を占めて、前年同期(53.3%)より30.0ポイント上昇した。一方、20人以上の倒産は発生しなかった(前年同期2件)。
 地区別では、関東6件(前年同期同数)が最多。次いで、中部と近畿、中国、九州が各2件。次いで、北陸1件(前年同期同数)のほか、前年同期は発生しなかった北海道と東北、四国で各1件発生し、全9地区で倒産が発生した。


 「新型コロナウイルス」の感染拡大以降、1年以上にわたり国内外への旅行需要が消失し、旅行業を取り巻く営業環境は厳しい。近畿日本ツーリストを擁するKNT-CTホールディングスが債務超過に陥るなど、大手旅行会社といえどもコロナ禍のダメージが大きい。小規模・零細企業では、コロナ禍以前からOTAの台頭や団体旅行の減少などにより業況が厳しく、コロナ禍が追い打ちをかけた構図で倒産件数は増加傾向にある。
 先行きの業況見通しは厳しく、過剰債務を抱えて資金調達が限界に達した小規模・零細企業による「あきらめ倒産」の増加が懸念される。

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