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上場企業「継続企業の前提に関する注記」調査(2021年3月期決算)

 2021年3月期決算(2020年4月-2021年3月)を発表した上場企業2,395社のうち、決算短信で「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(以下、GC注記)を記載した企業は26社だった。また、GC注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)は63社だった。
 6月3日現在、GC注記と重要事象を記載した企業数は合計89社で、新型コロナウイルスの影響で業績不振が表面化して前年同期から25社増加(43.1%増)した2020年3月期(83社)からは5社増えた。また、2020年9月中間決算(90社)より1社減少した。
 89社のうち、新型コロナ感染拡大の影響を要因としたのは46社(構成比51.6%)で半数を占め、外出自粛や臨時休業などの直撃を受けた外食やホテルなど消費関連が目立った。
 GC注記・重要事象の記載企業数は、2019年までは上場企業の好調な業績を背景に、50社台にとどまっていた。しかし、新型コロナ感染拡大で上場企業の経営環境も一変、年間を通じて影響を受けた2021年3月期は中間決算に引き続き、高止まりが鮮明となっている。

  • ※本調査は、全証券取引所に株式上場する3月期決算企業を対象に、6月3日までに発表した2021年3月期決算短信などに「GC注記」及び「重要事象」を記載した企業の内容、業種を分析した。

重要事象 KNT-CTホールディングスなど14社が新たに記載

 2021年3月期決算のGC注記企業は、2020年9月期中間決算より3社減少し、26社だった。2021年1月に事業再生ADRの手続きが成立した電子機器受託のユー・エム・シー・エレクトロニクス(株)(東証1部)など3社のGC注記が外れ、不動産リノベーション事業の(株)イントランス(マザーズ)としゃぶしゃぶ大手の(株)木曽路(東証1部)が、初めてGC注記を記載した。
 このほか、中間決算でGC注記を記載したアジア開発キャピタル(株)(東証2部)と五洋インテックス(株)(ジャスダック)は、3月期決算の発表が遅延している。
 また、重要事象の記載企業は中間決算から2社増加し、合計63社となった。このうち、14社は中間決算では重要事象を記載していなかったが、本決算で記載した。
 新たに重要事象を記載した14社のうち、8社が新型コロナの影響を主な理由としている。旅行業大手の近畿日本ツーリストを抱えるKNT-CTホールディングス(株)(東証1部)は、旅行需要の急減から売上減少と大幅な赤字を計上、連結ベースで96億5,400万円の債務超過に転落した。
 GC注記と重要事象を記載した企業数は合計89社にのぼり、リーマン・ショック後の2012年3月期(89社)以来、9年ぶりの水準。さらに、中間決算でGC注記・重要事象を記載し、決算発表を延期している3社を加えると、90件を上回る可能性が高い。

CG注記

本業不振が9割、債務超過は11社

 GC注記・重要事象の記載企業89社を理由別に分類すると、82社(構成比92.1%)が重要・継続的な売上減や損失計上、営業キャッシュ・フローのマイナスなどの「本業不振」を理由としている。
 次いで、「新型コロナによる悪影響」を理由としたのが46社(同51.6%)と半数を超えた。
 以下、「財務制限条項に抵触」15社、「資金繰り悪化・調達難」13社、「債務超過」11社。
 大幅な赤字計上で、金融機関から融資の際に締結する財務制限条項に抵触するケース、財務を毀損し、債務超過に転落した企業が目立つ。
 老舗オーディオメーカー、オンキヨーホームエンターテイメント(株)(ジャスダック)は債務超過を解消できず、7月末での上場廃止が決定した。
 このほか、金融機関への返済猶予や取引先への支払遅れなどの「債務支払条件変更・遅延」が8社など、重大局面が続く深刻な不振企業も存在している。

  • ※重複記載のため、構成比合計は100%とならない

CG注記

業種別では製造、サービス、小売で約8割

 GC注記・重要事象の記載企業89社の業種別は、製造業が30社(構成比33.7%)で最多。以下、サービス業が20社(同22.4%)、外食業者16社を含む小売業が19社(同21.3%)、情報・通信業が5社(同5.6%)、証券・商品先物が4社(同4.4%)と続く。
 新型コロナの影響が大きいサービス業と小売業が全体を押し上げ、上位3業種で69社(同77.5%)に達し、全体の約8割を占めた。

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東証1・2部で半数超え

 上場区分別では、東証1部が25社(構成比28.0%)で最多。以下、ジャスダックが24社(同26.9%)、東証2部が22社(同24.7%)と続く。東証1部、2部で47社(同52.8%)と半数を超えた。
 名門で実績がありながらも不振が続く中堅規模の老舗企業に加え、コロナ禍の直撃で業界大手でも事業基盤や財務体質が脆弱化し、GC注記・重要事象を記載するケースもある。

「新型コロナ影響あり」46社 小売・サービスで約7割

 新型コロナを要因の一つとした46社の業種別では、小売業が17社(構成比36.9%)で最多。このうち、外食産業が16社を占めた。
 次いで、サービス業が14社(同30.4%)で続き、ホテルやレジャー施設運営など観光関連の事業を手掛ける企業への影響の大きさを反映している。
 また、市況低迷のあおりを受けて業績悪化に影響した製造業が9社(同19.5%)、航空会社など運輸業が2社(同4.3%)と続く。


 上場企業の倒産は2020年は2件発生したが、2021年は5月までに発生はない。
 新型コロナによる影響が様々な業界に波及し、GC注記・重要事象を記載する企業が増加をたどっている。一方で、官民一体の手厚い資金繰り支援や事業再生ADRなど、新たな形の再建手法の浸透で経営破たんを回避しているケースは多い。
 コロナ禍の先行きは、ワクチン接種や感染者数の状況に左右され、上場企業でも今期の業績見通しは流動的な状況が続いている。GC注記・重要事象の状況は、経営状況を示す重要なサインであり、引き続き目を離せない状況にある。

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