• TSRデータインサイト

全国「カラオケボックス」業績調査

 全国の主要カラオケボックス運営会社46社の最新期(2020年1月期-2020年12月期)の業績は、売上高合計が2,940億9,700万円(前期比4.7%減)、純利益合計は78億3,200万円(同61.3%減)で、カラオケボックス業全体では大幅な減収減益となった。
 新型コロナ感染拡大は1年を経過したが、収束の目途が立たず、三密回避の広がりでカラオケボックス業界は厳しい環境が続いている。2021年4月に4都府県に発令された3度目の緊急事態宣言(その後、9都道府県に拡大)で、カラオケを提供する施設は休業要請の対象となっている。
 こうした状況下で、前期から減収減益に追い込まれたカラオケボックス運営会社は25社(構成比54.3%)と半数を超えた。前々期と比較した前期の減収減益は8社(同17.3%)で、コロナ禍が直撃した影響は深刻で減収減益の企業は37.0ポイント上昇した。
 カラオケボックス各社は感染防止対策の徹底、カラオケを利用しないテレワークスペースとしての貸出など、ウィズコロナに取り組んでいる。しかし、自治体などの休業要請によって営業は制限され、業界の苦境はしばらく続きそうだ。

  • 本調査は、TSR企業データベース390万社から日本標準産業分類の業種細分類「カラオケボックス業」を抽出、分析した。
    最新決算期を2020年1月期-2020年12月期とし、前期(2019年1月期-2019年12月期)、前々期(2018年1月期-2018年12月期)との比較が可能な主要46社を集計。

全体業績 46社の売上高合計は減少

 主要カラオケボックス運営会社46社の最新期決算(2020年1月-2020年12月期)の売上高合計は、2,940億9,700万円(前期比4.7%減)だった。また、当期純利益合計は78億3,200万円(同61.3%減)で、減収減益だった。
 売上高合計は、前々期から前期は前期比2.2%増だったが、前期から最新期は同4.7%減と減収だった。
 当期純利益合計は、前々期から前期は同10.8%増と増益だった。だが、前期から最新期は同61.3%減と、一転して大幅減益となった。

カラオケ

減収企業が約7割、前期から倍増

 最新期の決算では、減収が31社(構成比67.3%、前期14社)で前期から倍増。増収は9社(同19.5%、同23社)と、半減以下にとどまった。
 前期は増収が23社(構成比50.0%)と半数を占めたが、最新期では一転して減収が約7割を占めた。

カラオケ

減収企業の約7割が前期比1割超のマイナス

 最新期の減収31社のうち、売上高が前期比10%以上の落ち込みは21社(構成比67.7%)に達し、約7割を占めた。緊急事態宣言に伴う休業要請などの影響が売上を直撃したことを示している。

カラオケ

最新期は減収減益・赤字企業が増加

 カラオケボックス46社の最新期の利益は、増益が12社(前期比40.0%減、構成比26.0%)にとどまる一方、減益は29社(同52.6%増、同63.0%)で大幅に増加した。増収増益は5社(同61.5%減、同10.8%)、減収減益は25社(同212.5%増、同54.3%)だった。
 損益別では、最新期は黒字が構成比58.6%(27社)、赤字が同41.3%(19社)だった。
 赤字企業の割合は、前期の同17.3%(8社)から24.0ポイント上昇し、コロナ禍で厳しい収益状況が続いている。


 最新期(2020年1月期-2020年12月期)の主要カラオケボックス46社の業績は、大幅な減収減益だった。新型コロナ感染拡大が、カラオケボックス業界に大きな打撃を与えたことを裏付けた。
 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に伴う休業・時短営業の要請に加え、カラオケ喫茶等でのクラスター発生などで、密室空間での飛沫感染のイメージが広まり客足が遠のき、業績悪化に陥ったカラオケボックスが多い。さらに、3度に及ぶ緊急事態宣言の発令と期間延長、対象地域の拡大などで、いつ客足が戻り、売上がコロナ前に回復するか不透明だ。
 2020年のカラオケボックス業の倒産と休廃業・解散などで市場から撤退した企業は、合計23件に達し、過去10年間では比較的高い水準だ。新型コロナ関連倒産も、倒産の8件中、3件を占めた。
 カラオケボックス各社はコロナ禍の営業対策として、換気の良さのアピールだけでなく、テレワークプランの実施など、カラオケ以外の用途でのルーム利用にも力を入れている。だが、新型コロナの収束までは、自治体の休業要請に左右される側面が大きい。新型コロナ感染拡大から1年以上が経過し、支援策の一部は継続されているが、体力が限界に近づく事業者も増えており、予断を許さない状況になっている。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ