• TSRデータインサイト

上場主要「レストラン」の店舗数調査 1年間で670店減少、コロナ影響が深刻

 大手レストランチェーンの店舗数が減少している。レストラン運営の上場主要11社(※)の店舗数は、直近決算期末で前年同期比7.4%減少、店舗数では678店が閉店したことがわかった。
レストランチェーンは、店舗が広く従事スタッフも多い。東京商工リサーチが3月12日に発表した「大手居酒屋チェーン」店舗数調査では、前年同期から12.5%減で、873店が閉店した。
レストランは、居酒屋と比べ店舗数の減少率は緩やかだが、都心を中心に店舗撤退が加速している。こうした状況を背景に、大型連休(GW)を目前にした4月25日に3度目の緊急事態宣言が発令された。外出自粛やアルコール飲料の提供自粛の要請などで、家族連れや若者を中心に客足が遠のくことが見込まれるだけに、レストランの閉店が加速する可能性が出てきた。

“サイゼリヤ”以外店舗が減少

 有価証券報告書や四半期報告書などによると、上場するレストラン運営11社の店舗数は、直近決算期(2020年12月末・21年2月末)で合計8437店だった。
前年同期は9115店で、1年間で678店減少した。
11社のうち、サイゼリヤのみ1092店と前年同期の1085店から7店舗増えた。ほかの10社は、いずれも前年同期から減少した。

1年で2割以上の店舗減も

 1年間の減少率が最も高かったのは、「ステーキ宮」などを運営するアトムの21.7%減(468店→366店)だった。不採算店の見直しや子会社の譲渡などが影響した。
また、九州を拠点にファミリーレストランを運営するジョイフルも21.3%減(882件→694件)と2割以上減少した。同社は20年6月、コロナ禍による外食産業の環境変化を理由に、ジョイフル業態を中心としたグループの約200店舗を退店することを発表していた。
減少率では以下、うどんを主体に和食メニューを展開する「グルメ杵屋」の11.1%減(396店→352店)、デニーズを運営する子会社を傘下に収めるセブン&アイ・ホールディングス(以下HD)の9.5%(679店→614店)、昨秋に社員を対象とした希望退職も行ったロイヤルHD9.2%(564店→512店)の順。
11社の店舗数は、前年同期(2019年12月・2020年2月)が合計9,115店だった。その後、前四半期までは100店~150店の減少幅で推移していたが、前四半期から直近までの間に316店の大幅減となった。2020年10月以降に、店舗のスクラップが一気に進んだ。。
ただ、居酒屋が最初の緊急事態宣言明けの同7月から撤退のペースが一気に加速したのに比べ、レストランは徹撤退の流れは遅い傾向にあった。また、閉店対象となった地域も居酒屋に比べ、広範囲だった。首都圏を中心に、通勤者の夜間利用が多い居酒屋に比べ、出店立地や客層も多岐にわたるレストランは撤退などの対応が後手にまわっている。


 2021年1月、11都府県を対象に発令された2度目の緊急事態宣言は、3月下旬に解除された。
それからわずか1カ月後に、3度目の緊急事態宣言が発令された。最初の宣言期間中は、多くの飲食店が休業を余儀なくされ、助成金受給が限定された上場の外食産業は大半が赤字を計上した。
各社は、レギュラーメニューのテイクアウトの取り組みを進めている。また、ロイヤルHDやサイゼリヤなどは、家庭で調理しにくい総菜や普段店舗で提供しているメニューを冷凍食品で販売するなど、長引くコロナ禍への対応を模索している。
レストラン店舗は、居酒屋やバーなどに比べ客層が幅広く、出店も住宅街やロードサイドなど繁華街に限らない。ただ、外出自粛・巣ごもりの定着で、新型コロナの影響は“飲酒を目的としない”外食も直撃し、11社中、9社が直近決算期時点で赤字を計上している。
2021年2月の総務省の家計調査では、2人以上の世帯での外食への支出は前年同月比31.4%の減少と依然厳しく、同調査では2020年3月から12カ月連続で、前年同月を下回る水準で推移している。4月25日に発令された3度目の緊急事態宣言は、各種催事やレジャー、商業施設の営業も限定され、外食産業に打撃となることは避けられない。
レストランはパート従業員も含め、重要な雇用の受け皿になっているだけに、店舗減少は学生からシニアまで幅広い層の雇用機会の損失にも繋がりかねない。各社独自の対策にも限界もあるなか、状況によっては規模の大きなレストラン事業者にも支援が必要になるだろう。

 ※集計の対象企業・事業は以下の13社

(株)ゼンショーホールディングス(TSR企業コード:350389764、東証1部)[レストラン事業]
(株)サイゼリヤ(TSR企業コード:320254631、東証1部)
(株)すかいらーくホールディングス(TSR企業コード:298648857、東証1部) [レストラン事業]
ロイヤルホールディングス(株)(TSR企業コード:870061011、東証1部)[外食事業]
(株)セブン&アイ・ホールディングス(TSR企業コード:296398926、東証1部)[子会社のセブン&アイ・フードシステムズのみ]
(株)ジョイフル(TSR企業コード:890073660、福証)
(株)グルメ杵屋(TSR企業コード:570375207、東証1部)
(株)木曽路(TSR企業コード:400301512、東証1部)[飲食事業]
(株)アトム(TSR企業コード:600068510、東証・名証2部)
(株)WDI(TSR企業コード:290710880、JASDAQ)[直営のみ、海外含む]
(株)梅の花(TSR企業コード:870324896、東証2部)[外食事業のみ]

レストラン店舗数

レストランの店舗数の推移(TSR作成)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ