• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

金融庁、「包括的担保」の論点を公表

 2020年12月25日、金融庁は「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会・論点整理」を公表した。議論を始めた当初、金融庁は動産や債券のほか、知的財産、のれんなどを裏付けとする担保権について、「包括的担保」と総称していたが、公表された資料では「事業成長担保」(仮称)との名称も提示し、金融機関の事業者支援の在り方をより明確にした。
整理された論点は今後、法務省の法制審議会で本格的に検討される見通しだ。

 記者向けブリーフィングで、金融庁の担当者は、産業構造の転換により、有形資産より無形資産が重要な時代になっていることを指摘。従来の不動産担保だけでなく、事業自体を担保としてファイナンスを行っていくことが重要との認識を示した。
また、「生産性の向上に資するリスクマネーの提供」、「高齢化が進むなかで事業承継の支障となっている経営者保証」、「コロナ禍での事業再生」など、日本経済が抱える問題と担保の関係に触れ、事業成長担保がこれまでリスクが高く十分な融資が受けられなかった事業者への資金供給に繋がる可能性を示唆した。
一方、事業成長担保が導入された場合にも既存の担保制度がなくなるわけではなく、有用な場合には従来通りの不動産担保の活用を否定するものではない点も強調した。

主な論点

○貸し手の範囲の限定
事業成長担保は貸し手の権利が強くなる可能性があり、担保権の濫用防止や債務者保護の観点から担保権設定者に適格要件を求めるかどうか。

○経営者保証の利用制限
事業成長担保で事業のモニタリングが行われることで、経営者に対する規律付けや信用補完になるので、粉飾決算などの場合を除いて経営者の個人保証を取るべきではないのではないか。

○登記制度の簡便化
債権者が債務者の事業再生を支援しない場合、債務者が新たな債権者を探しやすくするため、担保権についての登記を整備・簡便化するべきではないか。

○不動産など個別資産の担保権との調整
事業とは独立して価値を持つ不動産の包括的担保上の取り扱い。すでに設定されている担保権との優先順位をどうするか。

○商取引債権や労働者債権の位置づけ
商取引や労働者は事業継続で不可欠であることを踏まえ、どの程度保護されるべきか。

○DIPファイナンスの順位設定
事業成長担保権が設定されている場合、DIPファイナンスを優先または同順位に設定できるようにするべきか。


金融庁の担当者は、事業成長担保の運用にはノウハウも必要になる点を挙げ、「すぐにすべての金融機関で使えるわけではないと思われる」との認識を示した。その上で、「事業性評価に基づき融資を行ってきた金融機関は、その経験やノウハウを活かすことで企業の事業価値を高め、地域経済の活性化につなげられるのではないか」と期待を込めた。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年1月6日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ