• TSRデータインサイト

【取材の周辺】「スカイカーシェア」、ひっ迫した資金繰りのなかオーナー募集か

 投資家のローン問題が表面化し、破産を申請したカーシェアリングサービス「スカイカーシェア」運営の(株)SERIAS(TSR企業コード:027949605、豊島区)。すでに2019年にはグループを含めて、資金繰りがひっ迫していたことが東京商工リサーチ(TSR)の取材でわかった。

TSRが独自入手したグループ1社の資料には、「令和元(2019)年8月下旬から9月にかけて、SERIASグループは高利で1億2,000万円の資金を調達した」と記載されている。
SERIASとグループ3社は、11月24日に東京地裁から破産開始決定を受けた。その1年以上前から資金繰りに変調をきたしすなか、高配当をうたい文句にオーナーを集めていた可能性がある。

 SERIASは判明する限り、少なくともグループ8社でスカイカーシェア事業を展開していた。グループ各社で、▽カーシェアオーナーの募集や獲得▽オーナーと業務委託契約を結ぶ▽高級車を調達し販売する▽カーシェア用自動車の修理・整備▽宣伝を行う、など役割を分担していた。

グループの主要1社である(株)ランドコアサービス(TSR企業コード:314381708)の売上高は、2018年1月期の1億3,300万円が、2019年1月期には3億6,200万円へ2.7倍に伸びた。しかし、事業拡大に伴う経費負担も膨らみ、そのツケが次第に経営に影響していった。
SERIASグループは、2019年夏に事業拡大に伴う経費増に対応するため、金融機関に借入を申し入れたが不調に終わった。このため、1億2,000万円を「高利」で調達した。
調達先や利率は現時点で判明していない。ただ、同時期に取引先から自動車の仕入代金の支払い猶予を受けており、資金繰り悪化は顕在化していた。さらに、深刻な経営危機に直面したグループ1社は2019年秋に私募債を募り、約2,000万円を調達した。

資金繰りが2019年秋にはひっ迫した状況に追い込まれながら、新規オーナー募集は少なくとも2020年8月まで続いた。8月にグループ1社と数百万円の契約を結んだオーナーもいる。
オーナーに配当できないことを通知したのは2020年8月だ。この間、2019年秋以降も、リスティング広告やユーチューバーを使った宣伝活動を行っていた。
SERIASとグループ会社は、深刻な経営不振を隠し、配当が危ぶまれるなかでオーナー募集を続けていたのだろうか。

カーシェア

車両が並ぶ駐車場(埼玉県内)[TSR撮影]

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年12月3日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ