• TSRデータインサイト

【取材の周辺】「責任果たして」家賃未納、原状回復で数百万、管理会社の訴え

アニメ制作会社の「失踪」

 「何も告げず姿を消したのに、Twitterを更新する余裕はあるんですね」
 都内のオフィスビルを所有する会社の担当者は、家賃を滞納したテナント入居会社の取締役が更新したツイートを前にため息をつく。
 23区西部から三鷹市、武蔵野市にかけて、とくに中央線沿線や西武線沿線には、老舗のアニメ制作会社やその下請け会社のオフィスが多く存在する。中央線のとある駅から徒歩5分ほどに立地するオフィスビル。
 ここに入居していたアニメ制作の下請けとして活動していたA社が今年10月、東京地裁から破産開始決定を受けた。社員は数名程度だったことや、関係者の話を踏まえると事業規模、負債はともに小規模とみられる。
 2017年設立のA社の商業登記(事業目的)には「アニメーション・ゲーム・漫画・イラスト・舞台演劇・音楽・遊技機等の視聴覚コンテンツの企画及び制作」と記載されている。A社の取締役には業界内で名の知られたアニメーターの名前もある。実際、イベントで役員がA社の取締役として紹介され講師を務めていたことも確認される。
 A社に変調が生じたのは2019年初旬。設立時から代表取締役を務めていた男性が辞任し、別の取締役が代表に就任した。ビル所有会社の担当者は、当時のことを振り返り「新たに代表に就いた人も、いきなり言われたようで驚いていたようだ」と振り返る。
 それから数カ月は何事もなく過ぎたが、同年の夏を前にして、同社従業員の出入りが極端に少なくなった。そして、7月ごろには「姿を消していた」という。

立つ鳥跡を濁さず?

 この時点で家賃数カ月分を滞納していた。さらに、次の入居希望者とのテナント契約も検討するため、ビル所有会社の担当者がオフィスに立ち入ったところ、「中は使ったままの状態で、ごみもそのまま。掃除を一から、という状況」だった。
 入居契約の際、代表を含む取締役の連帯保証を取っているため、A社が活動を停止していても、滞納した家賃を支払う義務は生じる。家賃の支払いを再三、代表に申し入れたが、自分たちの私物と一部備品を持ち去り、掃除もせず立ち去ったという。
 「社内で食べた菓子やカップ麺のような容器もそのまま。本当にひどい状況でした。もう腹立たしさを通り越して、やるせないような気持ちだった」と担当者は語る。
 ビル所有会社は、汚れたオフィスの掃除や業者の手配、通信設備の配線撤去などあらゆる業務に追われ、費用は数百万円にのぼった。

役員の責任

 A社の状況について、ビル所有会社の担当者は、電力等の使用量の確認の際にオフィスを訪れる程度だったため、業績や仕事の受注状況、社員の状況は分からないとしながらも、「担当しているアニメのフィギュアのようなものが置いてあったり、何かしらの仕事を受注しているようだった。途中まではとくに問題はないと思っていたけれど」と入居当初を述懐。だが、それから2年も経たずして、同社の代表、役員は揃ってビル所有会社に何も告げず、事務所を汚した状態で退去した。
 A社に対しては、「新しい社長は、前代表者から急に会社を任されて、舵取りをうまくできなかったのかもしれない」と推測するが、「オフィスを使用して会社を運営する以上、責任を果たしてもらいたい」と訴える。
 ビル所有会社は、A社役員を相手取り係争中だ。「会社がこんなことになり、支払い能力があるのか不透明な部分もあるけれど」としながらも「こちらも数百万の原状回復費用、作業に費やした労力や時間は計り知れない」と切実だ。

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「士業」の倒産、2年連続最多

「士業」の倒産が目立ってきた。給付金の不正受給の指南や、顧客から預かった資金の流用など、近年はコンプライアンス違反が原因で倒産するケースも目立つ。

2

  • TSRデータインサイト

「歯科関連」倒産 20年間で最多の39件 診療報酬改定の効果と中東情勢の行方

コンビニより多い歯医者が苦境に立たされている。2025年に「歯科診療所(歯医者)」と「歯科技工所」の倒産は、39件(前年度比56.0%増)と急増、2006年度以降の20年間で最多だった。

3

  • TSRデータインサイト

緊迫続く中東情勢 企業の約8割で事業にマイナス ガソリン価格と原材料の高騰、品薄に根強い懸念

 4月8日、米国とイランは2週間の停戦に合意したと伝えられるが、その間もイスラエルがレバノンを攻撃したと報じられるなど、ホルムズ海峡が全面開放されるかまだ不透明な状況が続く。この状況を受け、国内企業の約8割が「マイナスの影響がある」と回答した。

4

  • TSRデータインサイト

2025年度の「ラーメン店」倒産 過去2番目の57件 負債1億円以上が増加、効率化と付加価値が課題に 

2025年度(4‐3月)の「ラーメン店」倒産は57件(前年度比21.2%増)だった。集計可能な2009年度以降では、過去最多を記録した2023年度の63件に次ぐ、2番目の高水準だった。

5

  • TSRデータインサイト

クリアースカイの債権者が会見 ~ 第三者破産の経緯を説明 ~

4月7日、合同会社クリアースカイ(TSRコード: 137254873、京都府)の債権者が京都市内で会見した。同日に債権者が申し立てた破産(第三者破産)に関して経緯などを説明した。 会見には、多数の債権者のほか申立代理人の加藤博太郎弁護士、石戸悠太朗弁護士(加藤・轟木法律事務所)が出席した

TOPへ