• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

【取材の周辺】「責任果たして」家賃未納、原状回復で数百万、管理会社の訴え

アニメ制作会社の「失踪」

 「何も告げず姿を消したのに、Twitterを更新する余裕はあるんですね」
 都内のオフィスビルを所有する会社の担当者は、家賃を滞納したテナント入居会社の取締役が更新したツイートを前にため息をつく。
 23区西部から三鷹市、武蔵野市にかけて、とくに中央線沿線や西武線沿線には、老舗のアニメ制作会社やその下請け会社のオフィスが多く存在する。中央線のとある駅から徒歩5分ほどに立地するオフィスビル。
 ここに入居していたアニメ制作の下請けとして活動していたA社が今年10月、東京地裁から破産開始決定を受けた。社員は数名程度だったことや、関係者の話を踏まえると事業規模、負債はともに小規模とみられる。
 2017年設立のA社の商業登記(事業目的)には「アニメーション・ゲーム・漫画・イラスト・舞台演劇・音楽・遊技機等の視聴覚コンテンツの企画及び制作」と記載されている。A社の取締役には業界内で名の知られたアニメーターの名前もある。実際、イベントで役員がA社の取締役として紹介され講師を務めていたことも確認される。
 A社に変調が生じたのは2019年初旬。設立時から代表取締役を務めていた男性が辞任し、別の取締役が代表に就任した。ビル所有会社の担当者は、当時のことを振り返り「新たに代表に就いた人も、いきなり言われたようで驚いていたようだ」と振り返る。
 それから数カ月は何事もなく過ぎたが、同年の夏を前にして、同社従業員の出入りが極端に少なくなった。そして、7月ごろには「姿を消していた」という。

立つ鳥跡を濁さず?

 この時点で家賃数カ月分を滞納していた。さらに、次の入居希望者とのテナント契約も検討するため、ビル所有会社の担当者がオフィスに立ち入ったところ、「中は使ったままの状態で、ごみもそのまま。掃除を一から、という状況」だった。
 入居契約の際、代表を含む取締役の連帯保証を取っているため、A社が活動を停止していても、滞納した家賃を支払う義務は生じる。家賃の支払いを再三、代表に申し入れたが、自分たちの私物と一部備品を持ち去り、掃除もせず立ち去ったという。
 「社内で食べた菓子やカップ麺のような容器もそのまま。本当にひどい状況でした。もう腹立たしさを通り越して、やるせないような気持ちだった」と担当者は語る。
 ビル所有会社は、汚れたオフィスの掃除や業者の手配、通信設備の配線撤去などあらゆる業務に追われ、費用は数百万円にのぼった。

役員の責任

 A社の状況について、ビル所有会社の担当者は、電力等の使用量の確認の際にオフィスを訪れる程度だったため、業績や仕事の受注状況、社員の状況は分からないとしながらも、「担当しているアニメのフィギュアのようなものが置いてあったり、何かしらの仕事を受注しているようだった。途中まではとくに問題はないと思っていたけれど」と入居当初を述懐。だが、それから2年も経たずして、同社の代表、役員は揃ってビル所有会社に何も告げず、事務所を汚した状態で退去した。
 A社に対しては、「新しい社長は、前代表者から急に会社を任されて、舵取りをうまくできなかったのかもしれない」と推測するが、「オフィスを使用して会社を運営する以上、責任を果たしてもらいたい」と訴える。
 ビル所有会社は、A社役員を相手取り係争中だ。「会社がこんなことになり、支払い能力があるのか不透明な部分もあるけれど」としながらも「こちらも数百万の原状回復費用、作業に費やした労力や時間は計り知れない」と切実だ。

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ