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2020年1-9月「老人福祉・介護事業」の倒産状況

 2020年1-9月の「老人福祉・介護事業」倒産は94件(前年同期比10.5%増)で、介護保険法が施行された2000年以降、1-9月で最多だった2019年同期(85件)を上回り、最多を更新した。
 「老人福祉・介護事業」の新型コロナ関連破たんは3件にとどまった。ただ、無計画や未熟な経営を主因とする「放漫経営」が17件(前年同期比112.5%増)と倍増。新型コロナ感染拡大前から深刻な経営不振に陥っていた事業者に、コロナ禍が重くのしかかる格好となった。
 「三密」になりやすいデイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」30件(同25.0%増)、「訪問介護事業」46件(同6.9%増)が増加した。いずれも小・零細事業者が大半を占め、人手不足による人件費上昇が負担となった構造的な問題を抱えた事業者の淘汰も目立つ。
 なお、2020年1-8月の「老人福祉・介護事業」休廃業・解散は、313件(同19.0%増)に達した。2019年同期(263件)を上回り、このペースで推移すると「老人福祉・介護事業」は、倒産と休廃業・解散による市場撤退が、初めて年間600件台に乗せる可能性も出てきた。
 国や金融機関などの新型コロナ支援で何とか踏みとどまり、介護事業を続ける小・零細事業者は多い。その一方で、先行きを見通せず休廃業・解散に踏み切る事業者も増えている。
 今後、本格的な高齢化社会を迎える前に、コロナ禍の支援効果の息切れから「老人福祉・介護事業」の倒産が加速することが危惧される。

  • ※本調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む。

1-9月で最多件数を更新

 2020年1-9月の「老人福祉・介護事業」倒産は94件(前年同期比10.5%増)で、これまで最多だった2019年同期の85件を上回り、最多記録を更新した。このペースで推移すると、年間120件を上回り、最多だった111件(2017年と2019年)を超えて、最多記録を更新する勢いだ。
 負債総額は115億4,700万円(前年同期比23.7%減)で、2年ぶりに減少した。2020年1-9月は、負債1億円未満が76件(構成比80.8%)を占め、小・零細事業者を中心に推移している。

老人福祉・介護1

休廃業・解散も過去最多ペース

 2020年1-8月の「老人福祉・介護事業」休廃業・解散は313件(前年同期比19.0%増)だった。事業不振が続き、体力があるうちに事業をやめたほか、新型コロナウイルスで急激に業績が悪化し、事業意欲が喪失したことも背景にある。
 過去最多ペースで推移しており、年間最多だった2018年(445件)を上回り、休廃業・解散の件数も過去最多を更新しそうだ。

老人福祉・介護2

業種別、「訪問介護事業」が最多

 業種別では、「通所・短期入所介護事業」が30件と前年同期(24件)の1.2倍増に達した。もともと過小資本でのスタートアップが多く競争が激しいが、利用者を獲得できず倒産する事業者が増えた。また、ヘルパー不足が続く「訪問介護事業」も46件と前年同期(43件)から6.9%増加した。今年はこれにコロナ禍で「三密」を敬遠する動きも後押しした可能性もある。
 一方、有料老人ホームは6件で、前年同期(10件)から4割減少。特別養護老人ホームなどを含む「その他」が12件(同8件)だった。

原因別、放漫経営の「事業上の失敗」が急増

 原因別では、最多が販売不振(売上不振)の57件(前年同期比5.0%減、前年同期60件)。次いで、「事業上の失敗」16件(同128.5%増、同7件)、「運転資金の欠乏」10件(同100.0%増、同5件)で続く。未熟な運営や無計画などを要因とした放漫経営型の「事業上の失敗」が、急増した。

形態別、破産が95.7%、法的倒産が100%

 形態別では、破産が90件(前年同期比15.3%増、前年同期78件)と全体の9割(構成比95.7%)を占めた、次いで、特別清算が3件(同25.0%減、同4件)だった。一方、民事再生法は1件(同66.6%減、同3件)にとどまり、再建型を選択するケースは少なかった。

地区別、関東地区と近畿地区が20件台

 地区別では、最多は関東の26件(前年同期比8.3%増、前年同期24件)。次いで、近畿24件(前年同期同数)、中部15件(前年同期比36.3%増、前年同期11件)。九州10件(同42.8%増、同7件)、北海道(同28.5%減、同7件)と東北(同25.0%増、同4件)、中国(前年同期同数)が各5件、四国3件(前年同期ゼロ)、北陸1件(前年同期比66.6%減、前年同期3件)の順。


 「老人福祉・介護事業者」の2020年1-9月の倒産が、過去最多ペースで推移している。2019年までは、ヘルパー不足が深刻な「訪問介護」事業者の倒産が全体を押し上げていた。2020年に入ると、競争が激化している「通所・短期入所介護」事業者の倒産が急増し、「訪問介護」事業者の倒産も高止まりしている。
 また、新型コロナウイルスも「老人福祉・介護事業者」に例外なく、不測の事態を招いた。人員不足、利用者の減少などに加え、予期せぬ感染防止対策を強いられ、経営環境の激変が新たな負担になった。東京商工リサーチが8月末から9月上旬に実施したアンケート調査で、新型コロナの影響が継続していると回答した「老人福祉・介護事業者」は83.7%に達した。
 持続化給付金や雇用調整助成金などに加え、「老人福祉・介護」業界は在宅介護サービス事業者への助成金などの追加支援もあり、新型コロナ関連倒産は3件にとどまっている。
 だが、これらの支援策は一時的な緩和に過ぎず、足元では倒産に至らないまでも事業をやめる休廃業・解散が急増している。背景には、新型コロナで先行きが見通せず、事業継続を断念したケースが多い。今後、支援策で延命しながら過剰債務から抜け出せない事業者の倒産増加も懸念されている。
 新型コロナ前から「老人福祉・介護事業者」は見切り発車の起業が多く、小・零細事業者の倒産が目立った。また、種々の支援策に依存した事業者が多く、新型コロナの支援効果が薄まる年末以降、廃業か倒産に追い込まれる事業者が増える可能性も高い。
 本格的な高齢化社会を前に、福祉の現場にも新型コロナが暗い影を落としている。経営体力を喪失し、先行きを見通せない「老人福祉・介護事業者」の淘汰は、いつか今の若年層も巻き込むことになる。老人福祉・介護業界は、コロナ禍を奇貨として抜本的な業界の基盤整備が求められている。

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