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「人手不足」関連倒産(7月)

 2020年7月度の「人手不足」関連倒産は31件(前年同月比18.4%減)で、5月から3カ月連続で前年同月を下回った。2020年1-7月累計は285件(前年同期比25.0%増)で、年間最多を記録した2019年(426件)を上回るハイペースを継続している。
 東京商工リサーチが7月に実施した「2020年度業績見通し」アンケート調査では、「減収」や「経常減益」を見込む企業がそれぞれ7割に達し、新型コロナウイルスの感染拡大が企業業績に与える影響が如実に現れている。こうした経営悪化を背景に、人員整理や採用を抑制する企業が増え、雇用環境には急激な変化の兆しがうかがえる。この結果、「人手不足」関連倒産も事業承継が絡む後継者問題を中心に、これまでの人手不足とは異なる展開になる可能性が出てきた。


7月の「人手不足」関連倒産は31件、3カ月連続で減少

 2020年7月の「人手不足」関連倒産は31件(前年同月比18.4%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。前年割れが3カ月以上続いたのは、4カ月連続で減少した2017年11月-2018年2月以来、2年5か月ぶり。
 内訳は、代表者や幹部役員の死亡、入院などの「後継者難」が26件(前年同月同数)で最多。このほか、幹部や中核社員の独立、転職などで事業継続に支障が生じた「従業員退職」が3件(同6件)、人員確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」(同4件)と賃金上昇が収益を圧迫した「人件費高騰」(同2件)が各1件だった。

産業別 サービス業他が最多

 産業別では、最多がサービス業他の10件(前年同月11件)。次いで、卸売業(同5件)と小売業(同4件)が各7件、建設業3件(同7件)、運輸業2件(同1件)、製造業(同5件)と農・林・漁・鉱業(同ゼロ)が各1件。不動産業(同4件)と情報通信業(同1件)、金融・保険業(同ゼロ)は発生がなかった。

地区別 9地区すべてで発生

 地区別では、9地区すべてで発生した。関東12件(前年同月11件)を筆頭に、中国が4件(同1件)、中部(同5件)と近畿(同4件)、九州(同10件)が各3件、北海道(同2件)と東北(同3件)が各2件、北陸(同ゼロ)と四国(同2件)が各1件。

人手不足

2020年1-7月の要因別、「後継者難」型が約8割を占める

 2020年1-7月の「人手不足」関連倒産は285件(前年同期比25.0%増、前年同期228件)で、過去最多ペースをたどっている。
 内訳は、「後継者難」が221件(同64.9%増、同134件)、「求人難」が27件(同47.0%減、同51件)、「従業員退職」が22件(同15.3%減、同26件)、「人件費高騰」が15件(同11.7%減、同17件)。唯一増加した「後継者難」は全体の約8割(構成比77.5%)を占める。

2020年1-7月、サービス業他が66件で最多

 2020年1-7月の産業別は、サービス業他が66件(前年同期比10.8%減、前年同期74件)で最多。次いで、建設業が61件(同52.5%増、同40件)、卸売業43件(同79.1%増、同24件)、製造業40件(同48.1%増、同27件)、小売業34件(同61.9%増、同21件)、運輸業17件(同10.5%減、同19件)と続く。
 2020年1-7月の地区別では、9地区のうち北陸(1→8件)、中国(10→27件)、北海道(7→16件)、東北(14→21件)、近畿(29→40件)、関東(85→100件)の6地区が増加。一方で、四国(10→8件)、九州(45→40件)、中部(27→25件)が減少した。

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