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2020年上半期(1-6月)『後継者難』の倒産状況調査

 事業承継が中小企業の直面する課題に浮上するなか、2020年上半期(1-6月)の『後継者難』倒産は194件(前年同期比79.6%増)だった。前年同期の約1.8倍増に急増し、集計を開始した2013年以降、年上半期では2018年同期(146件)を上回り、過去最多を記録した。
 2019年の「全国社長の年齢調査」(2020年6月12日発表)によると、社長の平均年齢は62.16歳(前年比0.43歳上昇)で最高年齢を更新し、代表者の高齢化が顕著になっている。
 『後継者難』により倒産した企業の業歴は、1980年代以前の設立(個人企業は創業)が98件(構成比50.5%)と半数を占め、業歴が長いほど新陳代謝が遅れ、淘汰の波を受けている。
 『後継者難』倒産の主な要因では、代表者の「死亡」が78件(前年同期比32.2%増)で最多。次いで、体調不良が69件(同76.9%増)と続き、この2要因で合計147件を数え、全体の7割以上(構成比75.7%)を占めている。
 中小企業は、代表者が経営全般を仕切るケースが多い。一方、そうした企業ほど情報共有が進まず、ブレーンが育ちにくい。このため、代表者の急な死亡や病気に直面すると、たちまち事業継続に支障を来たす。代表者の高齢化は、業績悪化に拍車がかかりやすく、業績が厳しい企業ほど後継者が見つからない悪循環に陥る。多くの中小企業で「社長不足」が正念場を迎えている。

  • 本調査は7月8日に発表した2020年上半期(1-6月)の「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、「後継者難」倒産を抽出し、分析した。

年上半期 過去最多の194件

 2020年上半期(1-6月)の『後継者難』倒産は194件(前年同期比79.6%増)で、年上半期では2018年同期以来、2年ぶりに増加に転じた。
 前年同期(108件)から86件増と1.8倍増に急増し、集計を開始した2013年以降、年上半期では2018年同期の146件を上回り、最多記録を更新した。

 2020年上半期の全国企業倒産は4,001件(同0.2%増)と微増ながら、11年ぶりに前年同期を上回った。
 リーマン・ショック、東日本大震災、繰り返される地震、豪雨、台風などの天災、米中貿易摩擦、そして新型コロナ感染拡大など、想定外の事態が次々と起こり、難しい経営のかじ取りが求められた。
 『後継者難』倒産の背景には、こうした不測の事態への対応力の欠如も一因になったとみられる。
 倒産全体に占める構成比は、集計開始の2013年上半期が全体の1.9%にとどまったが、2020年同期は4.8%と、8年間で2.5倍に上昇した。
 金融機関では、企業の将来性に主眼を置いた「事業性評価」が浸透している。企業の存続可能性を判断する上で、業績や財務状況だけでなく後継者の有無も重要な判断基準になっている。

後継者難倒産 推移

要因別 代表者の「死亡」と「体調不良」が7割超

 『後継者難』倒産の主な要因では、代表者などの「死亡」が78件(前年同期比32.2%増)で最多。以下、「体調不良」が69件(同76.9%増)、「高齢」が26件(同225.0%増)、不慮の事故などを含む「その他」が21件の順。
 代表者などの「死亡」と「体調不良」の合計が147件(構成比75.7%)と、7割以上を占めた。
 会社全般の管理だけでなく、営業や経理なども担当するワンマン代表が、死亡や体調不良に直面すると、会社存続が危ぶまれることを端的に示している。

後継者難倒産 要因別

産業別 建設業が最多の47件

 産業別は、建設業が47件(前年同期比123.8%増)で最多。2013年以降、年上半期では2013年の37件を上回り、最多を記録した。
 次いで、製造業35件(同218.1%増)も、2018年同期(29件)を上回り、建設業と同じく過去最多を更新した。
 このほか、サービス業他34件(前年同期比6.2%増)、卸売業30件(同87.5%増)、小売業25件(同92.3%増)も前年同期を上回った。
 一方、金融・保険業は、2018年同期以来、2年ぶりにゼロだった。

後継者難倒産 産業別

形態別 消滅型の破産が約9割

 形態別では、破産が169件(構成比87.1%)で、最も多かった。  このほか、法的倒産は、特別清算が4件、民事再生法が1件。私的倒産は、取引停止処分が19件、内整理が1件だった。
 代表者が会社全般を担当している企業では、代表者の動向一つで事業継続が困難となりやすい。その結果、再建の見通しが立たず、破産を選択しやすい。また、代表者の死亡に伴う相続手続きで、法人を破産処理するケースも散見される。

後継者難倒産 形態別

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