• TSRデータインサイト

支援協の窓口相談、「コロナ特例リスケ」開始で6月は700件に迫る

 中小企業向け支援制度の利用が活発だ。2020年度第1四半期の中小企業再生支援協議会(支援協)の窓口相談(1次対応)件数は1,683件(前年同期534件)で、前年同期の約3倍に急増した。月別では2020年4月485件、5月527件、6月は速報値で671件と、月を追うごとに増えていることがわかる。

 「新型コロナウイルス」感染拡大による事業者支援で、4月1日に「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」(特例リスケ)の運用が始まり、相談数が大きく増加した。20年度第1四半期の窓口相談のうち、62%が相談企業の「駆け込み」だった。特例リスケ運用前は、金融機関の持ち込みが過半を占めていた。

 法テラスの紹介で支援協に相談した小売業者(年商約3,000万円)のケースでは、メインバンク(一行取引)からの既存借入のリスケと、セーフティネット保証4号を活用した600万円の新規調達に繋がった。また、粉飾決算で金融機関との関係が悪化していたスーパー銭湯の運営業者(年商約10億円)は、支援協による再生計画策定支援の実施表明など全取引行と調整を重ね、既存借入のリスケと8,000万円の新規調達に成功した。いずれも法テラスや顧問会計士からの紹介を受けたもので、企業自らが支援協へ駆け込んだ。

 管轄する中小企業庁の担当者は、「特例リスケ開始時に想定した相談件数は月500件程度で、6月実績は想定を上回る規模」と話す。その上で、「新型コロナの影響が表れ始めた2月、3月に資金調達した企業の2回目の資金ニーズが今後出てくる。企業が生きながらえるための計画策定支援は今後も増える」と語る。今年は新型コロナに加え、豪雨などの天災もあり、企業経営は厳しさを増している。こうした不透明な時代こそ、支援協の「金融機関調整機能」は真価を問われている。

再生支援協議会 窓口相談件数 推移


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年7月13日号掲載予定「SPOT情報」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ