「人手不足」関連倒産(5月)
2020年5月の「人手不足」関連倒産は28件(前年同月比9.6%減)で、2019年8月以来、9カ月ぶりに前年同月を下回った。ただ、5月の企業倒産が56年ぶりの記録的な低水準となったなか、「人手不足」関連倒産は約10%減にとどまっている。
2020年1-5月累計は218件と前年同期比1.5倍(46.3%増)で、年間最多だった2019年(426件)を上回るハイペースで推移している。ただ、新型コロナウイルス感染拡大で、時短営業や休業、業務縮小が広がった結果、企業の人手不足に変化の兆しもうかがえる。また、上場企業の人員削減も黒字企業から業績不振の「赤字リストラ」が増加、すでに1-5月までに33社(前年同期17社)に達して前年1-12月(35社)にほぼ並び、「人手不足」関連倒産の動向が注目される。
5月の「人手不足」関連倒産は28件、9カ月ぶりに減少
2020年5月の「人手不足」関連倒産は28件(前年同月比9.6%減)で、9カ月ぶりに前年同月を下回った。新型コロナに伴う資金繰り支援策で倒産が激減した影響も出ているとみられる。
内訳は、代表者や幹部役員の死亡、入院などの「後継者難」が25件(前年同月13件)で最多。このほか、人員確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」が3件(同11件)。
幹部や中核社員の独立、転職などで事業継続に支障が生じた「従業員退職」(同5件)、賃金上昇が収益を圧迫した「人件費高騰」(同2件)はゼロだった。
産業別 製造業が最多
産業別では、最多が製造業10件(前年同月4件)。次いで、サービス業他6件(同12件)、建設業4件(同6件)、卸売業(同2件)と小売業(同3件)が各3件、不動産業(同1件)と情報通信業(同1件)が各1件。農・林・漁・鉱業(同ゼロ)と金融・保険業(同ゼロ)、運輸業(同2件)は発生がなかった。
地区別 四国を除く8地区で発生
地区別は、8地区で発生した。関東(前年同月13件)と九州(同6件)が各7件でトップ、中部(同6件)と近畿(同3件)が各4件、北海道(同ゼロ)と中国(同ゼロ)が各2件、東北(同2件)と北陸(同ゼロ)が各1件。四国(同1件)はゼロだった。都道府県別では、大阪(同1件)と鹿児島(同ゼロ)が各3件で最多。
2020年1-4月の要因別、「後継者難」型が2倍増
2020年1-5月の「人手不足」関連倒産は218件(前年同期比46.3%増、前年同期149件)で、過去最多ペースをたどっている。
内訳は、「後継者難」が167件(同98.8%増、同84件)、「求人難」が25件(同32.4%減、同37件)、「従業員退職」が15件(同6.2%減、同16件)、「人件費高騰」が11件(同8.3%減、同12件)。唯一増加した「後継者難」は前年同期の約2倍で、全体の約8割(構成比76.6%)を占める。
2020年1-5月、建設業が50件で最多
2020年1-5月の産業別は、建設業が50件(前年同期比78.5%増、前年同期28件)が最多。次いで、サービス業他が45件(同2.2%増、同44件)、製造業36件(同111.7%増、同17件)、卸売業34件(同112.5%増、同16件)、小売業22件(同46.6%増、同15件)、運輸業14件(同±0.0%、前年同期同数)が続く。
2020年1-5月の地区別では、9地区のうち中国(5→19件)、北陸(1→6件)、北海道(4→12件)、東北(8→17件)、四国(4→6件)、近畿(21→30件)、関東(57→80件)の7地区が増加。減少は九州(30→29件)のみで、中部は前年同期同数の19件。