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レナウン、8,700万円足りずに民事再生 事業譲渡の可能性も

 5月15日、アパレル大手の(株)レナウン(TSR企業コード:295833440)が、子会社から東京地裁に民事再生を申し立てられ同日、開始決定を受けた。
 民事再生の「原因となる事実」は、手形決済資金8,700万円の不足だったことが東京商工リサーチ(TSR)の取材でわかった。
 レナウンは、消費増税や暖冬による業績悪化に加え、親会社である山東如意科技集団有限公司(中国)のグループ会社への売掛金の回収遅延(貸倒引当金53億2,400万円)などにより、2019年12月期(10カ月決算)は2期連続の最終赤字を計上。継続企業の前提に関する注記(GC注記)を記載していた。
 また、レナウンは連結子会社の(株)レナウンエージェンシー(TSR企業コード:291357725、以下エージェンシー)から、これまでに6億2,500万円の資金支援(貸付)を受けるなど、資金繰りがひっ迫していた。こうしたなか、5月15日支払期日の手形(合計)8,700万円の決済資金を調達できず、決済不能となる恐れが出てきたことから、エージェンシーが債権者として民事再生を申し立てた。
 エージェンシーが東京地裁へ提出した「再生手続開始申立書」によると、新型コロナウイルス感染拡大による百貨店や量販店の休業で、「(レナウンの)現預金残高は2020年2月以降、急速に減少」していた。このため、レナウンは親会社に支援を要請したが、「本日(TSR注:5月15日)までに支援は得られなかった」という。
 今後については、「緊急事態宣言の延長により今後もしばらくは販路が限られた状況にあることを鑑みると、民事再生手続き開始の申立てを行ったとしても、相手方(レナウン)の手元資金が潤沢に推移するとは限らない」とし、「減増資、計画内事業譲渡または計画外事業譲渡のいずれの選択肢も排除せずに、迅速に民事再生手続きを進めたいと考えていると(レナウンから)聞いている」(申立書)としている。

レナウン・毛利憲司社長(左)と前社長の神保佳幸氏(3月)

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