• TSRデータインサイト

【新型コロナウイルス関連】2020年4月「飲食業」倒産状況

 2020年4月の「飲食業」倒産は、80件(前年同月比29.0%増)だった。2カ月連続で前年同月を上回り、4月としては2014年の77件を抜き、1992年以降の30年間で最多を記録した。
 新型コロナウイルス感染拡大で、外出自粛や休業要請、短縮営業の厳しい経営環境が続くが、「新型コロナウイルス」関連倒産は2月0件、3月2件、4月10件と急増している。
 負債総額は39億400万円(前年同月比3.5%増)で、2カ月連続で前年同月を上回った。負債規模では、負債5億円以上が1件(前年同月2件)にとどまる一方、1億円以上5億円未満が9件(同50.0%増)発生し、負債を押し上げた。ただ、1億円未満の小・零細規模が70件(同29.6%増)で全体の8割以上(87.5%)を占め、小規模の企業・商店を中心に推移している。
 4月7日に緊急事態宣言が発令され、居酒屋、レストランなどの飲食店は感染拡大の防止のため営業時間の短縮や休業を強いられている。政府や自治体は、休業への協力給付金などを準備しているが、給付に時間がかかり、金額も規模によっては十分とは言い難い。
 東京都の新たな感染者数は9日連続で2ケタが続くが、新型コロナの終息はまだ見通せない。収入が激減するなか、事業継続を目指した店舗の賃貸料や人件費、水道光熱費などの固定費支払いにも限界がある。また、制度融資や緊急融資、給付金に加え、税金や家賃減免などの支援策も、実行を急がないと先行きが見通せず、倒産だけでなく廃業に直結する可能性が高まっている。

  • 本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス」「宅配飲食サービス業」)の倒産を集計、分析。

飲食業倒産推移

原因別「販売不振」が9割以上

 2020年4月の「飲食業」倒産は、「販売不振」が75件(前年同月比38.8%増)と全体の93.7%を占めている。飲食業は、これまでも同業者との競合に加え、深刻な人手不足と2019年10年の消費増税などが経営を圧迫していた。もともと体力が弱まっていたところに、新型コロナウイルスの感染拡大でインバウンド需要が消失し、外出自粛や休業要請などが追い討ちをかけている。
 倒産した飲食業は、資本金別で「1千万円未満・個人企業」が71件(前年同月53件)発生し、全体の約9割(88.7%)を占めるなど、過小資本で手元資金に余裕のない小・零細企業・商店の行き詰まりが顕在化した格好になっている。
 新型コロナウイルスが世界的にも終息しないと、感染拡大前のようなインバウンド需要は見込めず、また遠ざかった客足が元通りに戻るには時間を要するだろう。従来の賑わいを見せるまでのつなぎ資金の調達と様々な支援策を得られないと、飲食業の生き残りは時間とともに難しくなっている。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ