• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

「新型コロナ」で融資に群がる不審企業、警察も注意を呼びかけ

 「新型コロナウイルス」感染拡大は、企業活動に大きな影響を及ぼしている。政府は、資金繰りに腐心する中小・零細企業の救済にセーフティネットなどの支援を加速。資金不足の企業は申し込みを急いでいる。
 だが、ここに犯罪もどきの融資申請が紛れ込む。悪質な企業の事前チェックは難しい。表面はまともでも、悪意の輩かどうかは返済が始まらないとわからないからだ。


 かつてない申し込み件数が殺到しているのが自治体の制度融資窓口や金融機関、保証協会だ。迅速な資金供給のため、一部の自治体では金融機関と提携して事前資料を準備するなど、日々、審査の短縮に努めている。
 金融機関の融資担当者は、東京商工リサーチ(TSR)の取材に、「本来の基準では出せない(貸せない)企業にも出している」と、新型コロナの影響の広がりに本音を語る。
 融資審査は、経営者の態度や意欲、「おどおどしていないか」など、多方面にわたってチェックする。
 別の金融機関の担当者は、「融資を求める企業の中に、疑わしい企業はある」と認める。だが、「多くの企業が融資を求めて窓口に来店いただき、迅速に資金を供給しようにも、全企業を細かくチェックして悪質業者を除外するのは不可能」と審査に追われる苦悩を語る。

信用保証協会「審査量が増えている」

 新型コロナの影響で、売上高が2割、あるいは5割以上落ち込むと、政府の緊急支援策の対象になる。セーフティネット保証4号は、各都道府県の信用保証協会が100%保証する。
 都市圏の信用保証協会の担当者は、「(新型コロナの影響で)審査量が増えている。案件の処理に時間がかかり、審査が緩む可能性はある。今までの審査手法では対応しきれない」と現状を吐露する。その上で、「悪意の会社が紛れ込む可能性はあるが、申請時点では表面化していない」と、審査の難しさを語った。

「振り込め詐欺」と「マスク取引」

 警察関係者は、「新型コロナに便乗した詐欺が目立ってきた」と注意を呼び掛ける。新型コロナが深刻になって以降、突然、年配者に「お金が足りない」といった不審な電話がかかってくることが増えたという。新手の“振り込め詐欺”だ。また、品不足が続くマスクの取引を企業に持ち掛ける電話が増えたという。前出の関係者は、「実在する会社かチェックすべき」と個人だけでなく、企業にも新規取引には十分注意するようアドバイスする。


 資金繰りの厳しい企業を支え続ける金融機関や保証協会。新型コロナの影響で、在宅や時短勤務のなか、限られた人員で膨大な申し込み件数の処理を急いでいる。
 返済がスタートすると、悪意の、あるいは実態のない不審企業への融資が表面化する。 スピードと精度が求められる審査の現場は、かつてない戦いが続いている。

 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年4月24日号掲載「取材の周辺」を再編集)

「新型コロナ」支援制度を利用するための申請書

「新型コロナ」支援制度を利用するための申請書
Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ