「新型コロナ」で融資に群がる不審企業、警察も注意を呼びかけ
「新型コロナウイルス」感染拡大は、企業活動に大きな影響を及ぼしている。政府は、資金繰りに腐心する中小・零細企業の救済にセーフティネットなどの支援を加速。資金不足の企業は申し込みを急いでいる。
だが、ここに犯罪もどきの融資申請が紛れ込む。悪質な企業の事前チェックは難しい。表面はまともでも、悪意の輩かどうかは返済が始まらないとわからないからだ。
かつてない申し込み件数が殺到しているのが自治体の制度融資窓口や金融機関、保証協会だ。迅速な資金供給のため、一部の自治体では金融機関と提携して事前資料を準備するなど、日々、審査の短縮に努めている。
金融機関の融資担当者は、東京商工リサーチ(TSR)の取材に、「本来の基準では出せない(貸せない)企業にも出している」と、新型コロナの影響の広がりに本音を語る。
融資審査は、経営者の態度や意欲、「おどおどしていないか」など、多方面にわたってチェックする。
別の金融機関の担当者は、「融資を求める企業の中に、疑わしい企業はある」と認める。だが、「多くの企業が融資を求めて窓口に来店いただき、迅速に資金を供給しようにも、全企業を細かくチェックして悪質業者を除外するのは不可能」と審査に追われる苦悩を語る。
信用保証協会「審査量が増えている」
新型コロナの影響で、売上高が2割、あるいは5割以上落ち込むと、政府の緊急支援策の対象になる。セーフティネット保証4号は、各都道府県の信用保証協会が100%保証する。
都市圏の信用保証協会の担当者は、「(新型コロナの影響で)審査量が増えている。案件の処理に時間がかかり、審査が緩む可能性はある。今までの審査手法では対応しきれない」と現状を吐露する。その上で、「悪意の会社が紛れ込む可能性はあるが、申請時点では表面化していない」と、審査の難しさを語った。
「振り込め詐欺」と「マスク取引」
警察関係者は、「新型コロナに便乗した詐欺が目立ってきた」と注意を呼び掛ける。新型コロナが深刻になって以降、突然、年配者に「お金が足りない」といった不審な電話がかかってくることが増えたという。新手の“振り込め詐欺”だ。また、品不足が続くマスクの取引を企業に持ち掛ける電話が増えたという。前出の関係者は、「実在する会社かチェックすべき」と個人だけでなく、企業にも新規取引には十分注意するようアドバイスする。
資金繰りの厳しい企業を支え続ける金融機関や保証協会。新型コロナの影響で、在宅や時短勤務のなか、限られた人員で膨大な申し込み件数の処理を急いでいる。
返済がスタートすると、悪意の、あるいは実態のない不審企業への融資が表面化する。 スピードと精度が求められる審査の現場は、かつてない戦いが続いている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年4月24日号掲載「取材の周辺」を再編集)