• TSRデータインサイト

新型コロナウイルスへの対応、「資金の借入」状況

 「新型コロナウイルス」感染拡大が、上場企業の資金繰りにも影響してきた。取締役会で金融機関から「資金の借入」を決議、公表した上場企業は、3月は6社だったが、4月は1日から21日までに20社が公表し、合計26社に達した。26社の借入総額は1,869億円にのぼる。
 このほか、開示はしていないが、トヨタ自動車、日産自動車、ANAホールディングスなどの業界トップ企業でも大型の資金調達に動いており、総額は判明分だけで概算4兆円以上にのぼる(※参考資料を参照)。
 4月16日、「新型コロナ」の終息が見渡せず、「緊急事態宣言」の対象地域が全国に拡大した。インバウンド消失や外出自粛が直撃した観光関連などのサービス業、小売業などを中心に、上場企業も業績が悪化している。事態の長期化に備え、金融機関から運転資金を調達し、手元資金を厚くする動きが広がっている。

  • 上場企業が開示した「資金の借入に関するお知らせ」で、借入理由として「新型コロナウイルス」の影響をあげたものを集計した。集計期間は4月21日まで。情報開示せず、マスコミ報道による公表企業は対象外とした。
  • 対象は、金融機関からの借入、融資枠(コミットメントライン)設定による資金調達を集計し、親会社などからの資金借入は除く。借入金額がレンジ表示の場合、最大の金額を集計した。

借入金額上位7社のうち、5社が業績見通しを下方修正

 「資金の借入」を開示した26社の借入金額の合計は1,869億8,000万円に達する。また、26社中18社(構成比69.2%)は、担保等の設定は「無し」と開示した。
 26社のうち、金額が最も大きかったのは、半導体・電子部品商社の(株)レスターホールディングス(TSR企業コード:298008629)で、メガバンク3行のシンジケート方式で600億円の融資枠を設定。「今後の事業展開における機動的、安定的かつ効率的な資金調達及び昨今のコロナウイルス問題による金融環境の変化への迅速な対応」を目的とした。
 次いで、ホテル運営の藤田観光(株)(TSR企業コード:291046878)の220億円。「業績影響を鑑み、グループ経営の安定化を図るべく手元資金を厚くする」ことが目的。以下、チケット販売のぴあ(株)(TSR企業コード:291258980)と貸会議室大手の(株)ティーケーピー(TSR企業コード:296456853)が各150億円。ブライダル事業のワタベウェディング(株)(TSR企業コード:641093977)が130億円と続き、上位7社までが100億円以上の借入を開示した。
 100億円以上の借入を開示した7社のうち、藤田観光は、新型コロナウイルスによる想定以上の影響が発生し、前回の業績予想を取り下げ、通期業績予想を「未定」とした。このほか、ぴあ、ティーケーピー、クリエイト・レストランツHD、テイクアンドギヴ・ニーズの4社も新型コロナの影響で通期の業績見通しを下方修正しており、影響が表面化している。

上場企業「資金の借入」公表企業 金額上位10社

観光、ブライダル関連などのサービス業が最多の12社

 業種別ではサービス業が12社(構成比46.1%)で最多。旅行業の(株)旅工房(TSR企業コード:293618313 )やクルーズ船予約サイト運営の(株)ベストワンドットコム(TSR企業コード:296499501)、ホテル運営のワシントンホテル(株)(TSR企業コード:400266903)など、インバウンドや旅行手控えの影響が直撃した観光や宿泊業、キャンセルが相次いだブライダル関連の企業が目立つ。
 次いで小売業、運輸業、情報通信業がそれぞれ3社(同11.5%)。国際線の運休や国内線の減便が相次ぐ航空業界では、新興航空会社の(株)スターフライヤー(TSR企業コード:662009819)が41億円の借入を実施する。


 借入期間を開示した25社のうち、期間が5年以上は6社(構成比24.0%)にとどまり、比較的短い期間での借入が中心になっている。中長期的な資金計画というよりも、新型コロナウイルス感染拡大による事業環境の急激な悪化に備え、緊急対応としての意味合いが強い。
 一方、具体的な情報開示はないが、報道などでは自動車メーカーや航空会社などの大手企業が金融機関に対して融資を要請する動きも取りざたされている。東京証券取引所によると「資金借入に関する情報は、原則として借入金額が前年度末の連結純資産額の30%を超える場合には開示を要請している」(広報担当者)という。だが、融資枠(コミットメントライン)の設定は対象外で、資金借入を重要な投資情報として開示すべきかは企業の判断に委ねられる部分が大きい。
 このため、水面下では金融機関への融資要請はさらに広がっているとみるのが妥当だろう。
 新型コロナウイルスの影響による国内外の経済環境の悪化が懸念されている。緊急事態宣言の終息時期が不透明だけに、上場企業でも銀行借入を通じてキャッシュポジションを高め、運転資金を確保する動きが進むとみられる。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「リファラル採用」 企業の半数に広がる 定着率はリファラルが新卒、転職エージェントを上回る

東京商工リサーチは、採用に関する企業向けアンケート調査を実施した。人手不足やAI・DXの普及で転職市場の活況が続き、近年はリファラルやアルムナイ採用も広がっている。特に、リファラル採用は、転職エージェントの紹介より従業員の定着率が高いと考える企業が多いことがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

大手ホテル好調 客室単価と稼働率が同時上昇 客室単価はコロナ禍の2倍超、稼働率は83.3%

インバウンド需要と国内旅行の復活で、大手ホテルの客室単価と稼働率が、コロナ禍以降で最高を更新した。 ホテル運営の上場12社(13ブランド)の2025年度の客室単価は、1万7,818円(前年度比8.6%増)で前年度より1,424円上昇した。稼働率は83.3%(前年度82.3%)で、高水準を維持した。

3

  • TSRデータインサイト

経営責任を取る事業再生、ジュピターコーヒーは黒字化へ ~ ネクスト・キャピタル・パートナーズ 単独インタビュー ~

2025年度の企業倒産は1万505件(前年度比3.5%増)で、2年続けて1万件を超えた。 こうしたなか、20年を超すファンド運営で事業再生を数多く手掛けてきたのがネクスト・キャピタル・パートナーズ(株)だ。浅野晃司・取締役執行役員に特色や取り組みを聞いた。

4

  • TSRデータインサイト

企業の7.8%で退職金「増額・導入」  「減額・廃止」企業は月給などへ、資産形成は自己責任

これまで「年功序列」や「終身雇用」が前提の日本の会社では、長く勤め上げてまとまった退職金を受け取ることが一般的だった。だが、東京商工リサーチ(TSR)のアンケート調査で、2023年以降の退職金制度は「増額・導入」が7.8%に対し、「減額・廃止」は1.9%だった。

5

  • TSRデータインサイト

サッカーW杯 日本代表を支える40社 売上1兆円以上8社 設立10年未満も

2026年6月11日、米国・カナダ・メキシコの3カ国共催で、史上最大規模のFIFAワールドカップが開幕する。5月15日、日本代表メンバー26名も発表され、関心が集まるなか、スポンサーシップやパートナーシップなど、サッカー日本代表・日本サッカー協会を支援する企業40社を調査した。

TOPへ