• TSRデータインサイト

新型コロナ、「資金繰り支援策」を悪用するコンサル業者 自治体も困惑

 新型コロナ禍による業績悪化で、各自治体の窓口には中小企業から多くの相談が寄せられている。翌週、翌月の事業継続のため“急を要する”資金需要に、中小企業の経営者は東奔西走する。そんな非常事態を逆手に取った「コンサルティング業者」が都内で暗躍。中小企業の経営者だけでなく、自治体の窓口担当者をも翻弄している。

 自治体の担当者などによると、コンサルティング業者は、都内の各自治体が独自の資金繰り支援制度を開始した3月から、中小企業に話を持ち掛けているという。普段、役所や金融機関の担当者と接点が少なく、経理に詳しい担当者もいない小規模事業者をターゲットにする。自治体の融資保証の必要書類を揃え、書類作成を補助する見返りに、融資額の5%程度を報酬として要求する。
 5%と聞くと軽微なイメージもあるが、「500万円満額の融資を受けた場合、25万円を支払わないといけない。これは不当な価格だ」と自治体の担当者は憤慨する。東京商工リサーチが保有する決算書データから約30万社を分析すると、当期純利益(最終利益)率が5%を上回る業者はほとんどない。営業利益率でみても、5%を下回る業種は多い。
 自治体の支援制度を活用するには、金融機関の審査の前に自治体の担当者が使途や資金繰り等をヒアリングし、必要書類に不備がないか入念にチェックする。そのため、自治体の担当者は「本来、コンサルティング業者に高い報酬を払う必要なんかない」と断言する。だが、「急を要する場面では、正常な判断ができない事業者も少なくない。そこを狙っているのだろう」とコンサルタント業者の手口を指摘する。

 23区内では支援窓口を開設以降、融資相談に来た事業者から「コンサル業者のセールスにどう応じていいか分からない」、などの相談が多数寄せられているという。「コンサル業者から話があっても、まず自治体の窓口への相談など一度立ち止まって考えてほしい」と区の担当者は呼びかけている。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ