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中国親会社が社長と会長の再任に反対、揺れる名門レナウンの新社長が会見

 大手アパレルの(株)レナウン(TSR企業コード:295833440、東証1部)の毛利憲司新社長と前社長の神保佳幸相談役が3月27日、都内で会見を開いた。
 神保前社長は、「親会社の動議で代表者が交代する例を見ないケース。(株主総会)当日まで半信半疑だった」と淡々と語った。
 一方、毛利新社長は、「(親会社から)生産支援、未収金の解決のサポートがある」と親会社との良好な関係を強調した。「新型コロナに対する手立てはない」(毛利氏)と売上減少を明かしたうえで、経費削減とEC強化で経営再建への道筋を説明した。


 レナウンは消費増税や暖冬、親会社のグループ会社の延滞した売掛金引当などで、2019年12月期(連結、10カ月変則)は2期連続で赤字を計上し、「継続企業の前提に関する注記」(GC注記)を決算短信に記載した。
 3月26日開催の定時株主総会では突如、神保佳幸社長と北畑稔会長の再任案が否決された。5割を超える大株主で、中国の山東如意科技集団が議案に反対したためだ。

 長期にわたり経営不振が続いたレナウンは2010年、欧州などのアパレル会社を次々に傘下に収めていた山東如意科技集団有限公司(以下、山東社)のグループに入った。
 だが、期待に反して提携効果は見いだせず、レナウンは規模縮小が続く。さらに、山東社のグループ会社との取引で売掛金の回収が滞り、2019年12月期に53億2,400万円の貸倒引当金を計上し、大幅赤字の原因になった。
 滞った売掛金は山東社が保証しているが、支払われていない。レナウンと山東社の関係悪化を懸念する声が高まるなか、山東社が出した答えがレナウンの社長と会長(いずれも当時)の再任反対だった。
 同日、新経営体制として代表取締役社長に取締役上席執行役の毛利憲司氏が昇格。会長には邱亜夫(チウ ヤーフ)取締役が就任した。

中国親会社が社長と会長の再任に反対、揺れる名門レナウンの新社長が会見

記者会見をする毛利憲司新社長(左)と前社長の神保佳幸相談役(3月27日撮影)

 毛利新社長は、「売掛金回収問題が喫緊の課題と思っている。しかし、解決しても当社の信用回復に至らず、業績改善が課題。折しも新型コロナで消費は経験したことのないような打撃を受けている」とコメントした。
 また、売掛金の回収問題は、「日中合体の体制ができた。(レナウンの)会長に就任していただき、未回収問題も率先してサポートしてもらう」とし、資金繰りは「新型コロナは厳しいが、今のところは大丈夫」と説明した。
 レナウンは試練が続く。ふた昔前、テレビからCMソングの「レナウン娘」がしきりに流れたが、もう知っている人もめっきり減った。
 業績悪化やキャッシュの減少。そして新型コロナの感染拡大と、経営環境は厳しさを増している。さらに、売掛金の未収問題の相手が親会社であることも事情を複雑にしている。レナウンは試練が続く。ふた昔前、テレビからCMソングの「レナウン娘」がしきりに流れたが、もう知っている人もめっきり減った。
 親会社が役員再任で反対に回り、新たに就任した毛利憲司新社長と、邱亜夫(チウ ヤーフ)取締役会長。一連の動きはガバナンス機能を問われても仕方ない部分もあるが、答えはレナウン再建で見せるしかない。

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