• TSRデータインサイト

上場自動車関連メーカー 「新型コロナウイルス業績影響」調査

 「新型コロナウイルス」の世界的な感染拡大に伴い、自動車産業への悪影響が広がっている。ここにきてトヨタ自動車やマツダなどの完成車メーカーが国内の一部の生産ラインを休止。生産調整を打ち出すなかで、部品メーカーなどへの波及が懸念されている。
3月25日までに、自動車関連メーカーで決算情報や適時開示情報などで新型コロナウイルスによる業績への下振れ影響を受けたとしたのは72社だった。このうち23社(構成比31.9%)が新型コロナウイルスの影響を一因として業績予想を下方修正した。23社の売上減少額は合計1,332億円、当期純利益の減少額は合計1,058億円だった。
一方、新型コロナウイルスによる業績への下振れ影響が懸念されるものの、「影響は精査中」、「現時点では予測困難なため業績予想に織り込んでいない」などとして数値が確定できないケースが49社(同68.0%)と約7割にのぼった。終息が依然として見えず、完成車の主要販売先となる欧米市場が混乱するなか、自動車関連メーカー各社の業績ダウンがさらなる広がりをみせる可能性が高まっている。

  • 自動車部品や内外装品、車載用製品の生産を主要事業とする上場メーカーを自動車関連メーカーと定義、対象期間は3月25日まで

23社が下方修正 7社が最終赤字に転落 売上・利益下方修正の最大はTDK

 今期の業績予想を下方修正した23社のうち、売上・利益ともに下方修正額の最大はTDK(株)(TSR企業コード:291102751)だった。売上高の下方修正額は300億円(増減率▲2.2%)、最終利益の下方修正額は260億円(同▲31.0%)。中国工場の操業度の低下や各事業の中国向け販売が減少、利益面では自動車市場の需要減を受け、製造設備の減損損失175億円を計上する見込みとした。
次いで売上下方修正額が大きいのは、樹脂部品などを製造するデンカ(株)(TSR企業コード:291095968)の150億円、自動車向けランプ大手のスタンレー電気(株)(TSR企業コード:290091187)の140億円と続く。また利益面では、7社が下方修正により黒字から最終赤字に転落した。
一方、自動車向けホースなどを製造する(株)ニチリン(TSR企業コード:660221896)は2月14日、中国の自動車メーカーの生産停止を受けて、業績予想の修正を発表していたが、主要顧客となる自動車工場の生産停止が欧州や北米、アジア諸国などでも拡大するなかで「今後の受注を見通すことは極めて困難」として3月23日、従来予想を取り下げ「未定」とすることを発表した。
このほか、国内の主要完成車メーカーなども、新型コロナウイルスによる今期業績への影響額は現状、未開示となっている。年度末を迎え、今期の業績を確定するなかで新型コロナウイルスによる影響がどの程度出てくるか、注目される。

「新型コロナウイルス」業績下振れ影響内訳

 TSR企業データベースに基づく国内自動車メーカー主要7社の取引先総数は2万6,937社(重複除く)に及び、従業員合計は約946万人、売上高合計は756兆9,917億円に達する。
自動車産業は裾野が広く、重層的な下請け構造が連なる巨大産業でもある。世界的な自動車市場の減退、完成車の生産停止の影響はダイレクトに自動車関連メーカーに波及し、そこに連なる下請メーカーや卸、小売などの販売業者、整備業者などあらゆる業種に甚大な影響を与える。
現状では売上高・利益ともに下方修正分の合計は1,000億円台にとどまっている。ただし、下方修正の主な理由は、中国での生産縮小やサプライチェーンの悪化などを要因とするものが中心。判明した数値は氷山の一角といえる。今後、世界的な自動車産業の停滞が進むなかで、国内自動車関連メーカーの売上減や損失計上額は加速度的に拡大する可能性も高く、動向には注意を怠れない。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ