• TSRデータインサイト

中小企業再生支援全国本部がセミナーを開催、「窓口相談は前年同期比17.2%増」

 中小企業再生支援全国本部(以下、全国本部)は2月14日、「中小企業再生支援セミナー」を都内で開催した。事業再生に詳しい弁護士や公認会計士、金融機関の担当者、企業経営者など約550人が参加した。


 中小企業再生支援協議会(以下、支援協)は、各都道府県に設置されている公的機関。経済産業省の委託で、事業再生の専門家が事業計画の策定や資金面での金融機関への対応方法などの相談を受け付けている。全国本部は、各支援協の活動を支援する組織として、中小企業基盤整備機構に設置されている。
 セミナーで全国本部の加藤寛史・副統括プロジェクトマネージャーは、2019年度の再生計画策定支援の窓口相談(一次対応)件数が、4-12月累計で1,703件に達したことに触れ、「12月までで前年同期より250件、17.2%増えた。年度では2,000件を超えるのではないか」と過去5年で最多となる見通しを明らかにした。 これまで相談の持ち込みは金融機関が多かったが、2019年度は企業本人(事業者)の比率が増えているという。ただ、「事業者からの相談は相当事業が痛んでおり、再生計画の策定が困難な場合が多い」と、相談内容のトレンドを説明した。
 パネルディスカッションでは、「粉飾」が話題にのぼった。企業が金融機関に対し、税務申告書や預金残高・借入残高証明を提出する習慣が薄れていることが粉飾の土壌になっているとの見方がある。これに対し、金融機関の担当者は「残高証明を持参いただいたり、頂戴にあがるケースが少なくなった。他行との兼ね合いで、よそに出していないと言われると、“おかしいぞ”と思わない限り突っ込めない」と、現場の声を代弁した。別の金融機関の担当者は、「企業のホームドクターである顧問税理士との連携を進めている。また、税理士法第33条2に基づく“書面添付制度”に沿った決算書の区分を(行内)データベースに組み込み運用する」など、粉飾を防ぐための具体的な取り組みも披露された。税理士は「書面添付」で財務状況の正確性などを保証する。これは税理士の権利により提出するもので、責任も負うことになる。

「中小企業の駆け込み寺」としての役割

 パネルディスカッションの後半では、「失敗事例から学ぶ中小企業再生の本質」と題し、支援協に持ち込まれながら、結果的に法的手続きとなった事例の検討が行われた。
 登壇した小林信明弁護士(長島・大野・常松法律事務所)は、「中小企業の粉飾は大きな社会問題の一つ。金融機関、事業者の双方でなくす努力を継続しなければならない。経営者保証ガイドラインは、中小企業と金融機関の密なコミュニケーションや適切な情報開示が盛り込まれているが、経営者保証の観点のみならず、平時での付き合い方、関係のあり方のガイドラインが必要ではないか」と問題提起した。
 また、「法的整理になることが失敗ではない。金融調整などの前さばきが有益な場合もある」(小林弁護士)と述べ、支援協の「中小企業の駆け込み寺」としての役割に期待を示した。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年2月19日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。