• TSRデータインサイト

子会社で「循環取引」発覚の東芝、「意図的、組織的な関与は認められず」

 東証2部上場の(株)東芝(TSR企業コード:350323097)は2月14日、連結子会社の東芝ITサービス(株)(TSR企業コード:350464685、以下東芝IT)で発覚した「実在性の確認できない取引」(以下、循環取引)に関する調査報告書を公表した。同日午後から、都内で記者会見を行った。
 弁護士や公認会計士らのメンバーとして作成された調査報告書では、東芝ITは架空取引の契約当事者ではあったものの、東芝ITの役職員による主体的、意図的、組織的な関与は認められず、契約に関わっていた従業員を含め、役職員が循環取引であったことを認識していたことを示す直接的な証拠も認められなかった、とした。
 また、2015年11月から2019年7月までの間、パソコンなどIT機器販売に絡み、書類上の取引のみで売上を計上する循環取引の疑義があったのは計24案件(26取引)で、売上高は約435億円に上り、東芝ITを含む9社が関与していたことも明らかにされた。

多くの報道陣が押し掛けた東芝の会見

‌多くの報道陣が押し掛けた東芝の会見

 調査対象となった架空取引に関連して東芝は、デジタルソリューション部門の売上高215億円、営業利益18億円のマイナス影響を2019年4〜12月期の連結財務諸表に織り込んだ。ただ、2019年3月期以前に発生し会計処理した取引については、連結財務諸表に与える重要性が乏しいとして、過年度の決算は訂正しない方針も示した。

 会見での循環取引に関する主な質疑応答は以下の通り。

Q.循環取引にかかわった社員は1人なのか?
A.組織変更はあったが、ほぼ同じ業務を10年程度やっていた。
Q.(循環取引に関与したとされる)A社との今後の取引は?
A.A社とは正常取引がある。損害賠償(請求)は現時点では考えていない。
Q.監査法人の監査意見はどうなるか。
A.東芝の連結決算に与える影響額は小さい。監査意見に関する制限は聞いていない。
Q.刑事事件にはならないのか。
A.現時点でそうなるとは考えていない。民事事件としても関係会社との突合せが終わっていない。
Q.最終ユーザーが明かせない取引には疑問を持たなかったのか。
A.国家機関等が最終顧客となる場合、秘匿性が高いことも多く、あまり疑問を持たなかった。

 なお、この件に関連して、システム開発のネットワンシステムズ(株)(TSR企業コード:292339585、以下ネットワン)は2月13日、調査委員会の中間報告書を公表。営業を担当していたシニアマネージャーが取引を持ちかけるなど主導役を担っていたことを明らかにしている。取引期間は2015年2月から2019年11月まで、件数は38件、累計で276億円の売上高を水増ししていたという。
 ネットワンは2月13日、2019年4〜12月期決算を発表する予定だったが、2月14日、調査委員会の調査の過程で原価付替取引があることも発覚したため決算発表を再延期。3月13日までに調査最終報告書と同決算を発表する予定。
 また、日鉄ソリューションズ(株)(TSR企業コード:292309910、以下NSSC)は2月6日、特別調査委員会の調査結果を公表。2015年3月期から2019年4〜9月期までの期間において29件の取引で不適切な会計処理が認められ、該当する取引の売上金額は計429億円に達したという。NSSCは同期間の決算短信などを訂正した。
 さらに、富士電機ITソリューション(株)(TSR企業コード:295862688、以下FIS)の親会社である富士電機(株)(TSR企業コード: 291043526)も1月30日、FISにおいて38件の取引で、売上合計242億円の架空取引が見つかったと公表している。
 このほか、みずほ東芝リース(株)(TSR企業コード:295942258)や、ダイワボウホールディングス(株)(TSR企業コード:570127289)子会社のダイワボウ情報システム(株)(TSR企業コード:570615720)が関与していた。



(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年2月18日号掲載予定「WeeklyTopcs」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

次世代電池のAPB、経営騒動の舞台裏 ~ APB・大島麿礼社長 単独インタビュー ~

次世代リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発や製造を手がける技術系ベンチャーのAPB(株)が注目を集めている。大島麿礼社長が東京商工リサーチの単独取材に応じた(取材日は4月10日)。

3

  • TSRデータインサイト

コロナ禍で急拡大の「マッチングアプリ」市場 新規参入のテンポ鈍化、“安全“投資で差別化

20代、30代の若者を中心に、恋活や婚活、恋愛の真面目な出会いを求めるマッチングアプリの利用が広がっている。マッチングアプリの運営会社はコロナ禍を境に急増し、社数は6年間で5.6倍になった。2019年3月末の5社から、2025年3月末は28社と6年間で大幅に増えた。

4

  • TSRデータインサイト

丸住製紙(株)~ 倒産した地元の“名門”製紙会社の微妙な立ち位置 ~

2月28日に新聞用紙の国内4位の丸住製紙(株)(四国中央市)と関連2社が東京地裁に民事再生法の適用を申請してから2週間が経過した。負債総額は約590億円、債権者数は1,000名以上に及ぶ。愛媛県では過去2番目の大型倒産で、地元の取引先や雇用への影響が懸念されている。

5

  • TSRデータインサイト

介護離職者 休業や休暇制度の未利用54.7% 規模で格差、「改正育児・介護休業法」の周知と理解が重要

団塊世代が75歳以上になり、介護離職問題が深刻さが増している。ことし4月、改正育児・介護休業法が施行されたが、事業規模で意識の違いが大きいことがわかった。

TOPへ