• TSRデータインサイト

「人手不足」関連倒産(1月)

 2020年1月の「人手不足」関連倒産は55件だった。2013年に調査を開始以来、2019年12月の51件を上回り、最多を記録した。また、2カ月連続で50件を上回り、急増ぶりが目立つ。
 2019年(1-12月)に過去最多の426件を記録した「人手不足」関連倒産は、2020年に入っても増勢が衰えない。人手不足は、中小・零細企業には受注制約などの営業面、人件費高騰のコスト面など、様々な局面で深刻な影響を及ぼすだけに、今後の動向が注目される。


1月の「人手不足」関連倒産は55件

 2020年1月の「人手不足」関連倒産は55件(前年同月比83.3%増)と急増した。2019年9月から5カ月連続で前年同月を上回った。月間倒産としては、2013年1月に調査を開始以来、2019年12月の51件を上回り、2カ月連続で過去最多記録を更新した。
 内訳は、代表者や幹部役員の死亡、入院などの「後継者難」が36件(前年同月12件)で最多。次いで、人員確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」が10件(同12件) 、賃金上昇が収益を圧迫した「人件費高騰」が5件(同4件) 、幹部や中核社員の独立、転職などの退職から事業継続に支障が生じた「従業員退職」が4件(同2件)だった。

人手不足関連倒産 月次推移

産業別 建設業が最多

 産業別では、最多が建設業の14件(前年同月4件)。次いで、卸売業(同3件)とサービス業他(同6件)が各9件、製造業(同5件)と運輸業(同6件)が各8件、小売業4件(前年同月同数)、農・林・漁・鉱業(同ゼロ)と不動産業(前年同月同数)、情報通信業(同)が各1件。金融・保険業は前年同月と同様に発生がなかった。

地区別 8地区で発生

 地区別では、全国9地区のうち8地区で発生した。関東19件(前年同月12件)を筆頭に、九州10件(同6件)、近畿8件(同5件)、東北7件(同1件)、北海道(同ゼロ)と中部(同5件)、北陸(同ゼロ)が各3件、中国2件(同ゼロ)と続く。四国(同1件)は発生がなかった。都道府県別では、最多が東京9件(同5件)で、福岡8件(同4件)、大阪6件(同4件)、青森(同ゼロ)と神奈川(同2件)が各4件で続く。

2019年度(4-3月)は過去最多を更新見込み

 2019年度(4-3月)の件数は1月までの累計で389件(前年同期比15.4%増、前年同期337件)に達した。この結果、年度では過去最多だった2018年度の399件にあと10件差までに迫り、年度の最多件数の更新がほぼ確実になった。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

建材販売業の倒産 コロナ禍の2倍のハイペース コスト増や在庫の高値掴みで小規模企業に集中

木材や鉄鋼製品などの建材販売業の倒産が、ジワリと増えてきた。2025年1-7月の倒産は93件で、前年同期(75件)から2割(24.0%)増加した。2年連続の増加で、コロナ禍の資金繰り支援策で倒産が抑制された2021-2023年同期に比べると約2倍のハイペースをたどっている。

2

  • TSRデータインサイト

「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり

異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職を、直近3年で企業の30.1%が経験していることがわかった。大企業では38.0%と異動範囲が全国に及ぶほど高くなっている。

3

  • TSRデータインサイト

女性初の地銀頭取、高知銀行・河合祐子頭取インタビュー ~「外国人材の活用」、「海外販路開拓支援」でアジア諸国との連携を強化~

ことし6月、高知銀行(本店・高知市)の新しい頭取に河合祐子氏が就任した。全国の地方銀行で女性の頭取就任は初めてで、大きな話題となった。 異色のキャリアを経て、高知銀行頭取に就任した河合頭取にインタビューした。

4

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。

5

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

TOPへ