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破産の「白鳥エステ」、一般債権の配当は「極めて難しい」

 「白鳥エステ」を運営し、2019年10月1日に東京地裁から破産開始決定を受けた(株)アキュートリリー(TSR企業コード:300584920)の債権者集会が1月20日、東京地裁で開かれた。
 末永(旧姓白鳥)紘子社長ほか、破産者代理人の大沼和子弁護士(みずき総合法律事務所)、破産管財人の井原智生弁護士(大原法律事務所)らが出席。債権者は、元従業員を中心に約50名が参加した。
 一部の元従業員や関係者は、末永社長個人に資金を貸し付けており、一人あたりの債権額は数百万円にのぼることが明かされた。


 破産管財人が作成したアキュートリリーの財産目録によると、財団債権(労働債権含む)は1億4,300万円、優先的破産債権(公租公課含む)は589万円。
 破産開始決定から1月20日までの収支計算書によると、収入の部は申請代理人から引き継いだ現金300万円を含め、総額303万円だった。一方、支出の部では従業員の離職票作成などの残務処理費用、残置物処理費用など合計256万円を計上した。
 破産管財人によると、約200名にのぼる従業員への連絡などが難航したことから残務を補助した元従業員への委託料や事務費に掛かる費用が「想定外だった」という。その上で「一般債権、労働債権の配当見込みは非常に少ないだろう」(破産管財人)と説明した。
 元従業員からは、末永社長に従業員給与が未払いとなった経緯や破産申請の理由を説明するよう求める声が上がった。さらに、一部の元従業員や関係者による末永社長個人への貸付の処遇を問う声も多くあがった。
 末永社長個人への貸付額が数百万円にのぼる人もおり、「個人の貸付について、破産(開始決定)後も連絡が一切来ていない」(債権者)と悲痛な声もあった。これに対して破産管財人は、「(末永氏への貸付分は)個人に対するものであり、財団債権にはあたらない」と述べた。現時点で、末永社長個人は債務整理の手続き入りしていないという。ただ、貸付金の処遇について申請代理人は、「個人の債務整理について正式に受任していないが、相談を受けている。私から書面で連絡する可能性もある」と述べ、今後の対応に含みを持たせた。

 出席した債権者は、末永社長がアキュートリリーの破産開始決定後も一部の元従業員とともに、常連顧客らへ施術サービスを継続していたことを指摘。サービス提供に関わる顧客との連絡にアキュートリリーのメールフォームが利用されたとみられることを問題視し、「違法ではないのか」(債権者)と声をあげた。これに対し、末永社長は「破産開始後は私の個人企業としての認識でやっていた。元従業員とは雇用関係は結んでいないが、私の方から声掛けして、報酬を渡した」と経緯を説明。アキュートリリーのメールフォームを使った点については、「軽率な行動だった」と謝罪した。
 永氏は、アキュートリリーの運営に関連して、エステスクールも主宰。スクールの元受講者からは、前払い受講料の返還の質問もあったが、破産管財人は「スクール代金は一般債権となる。相当額の労働債権を優先させなければならないため、配当は極めて難しい」と理解を求めた。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年1月22日号掲載予定「WeeklyTopcs」を再編集)

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