• TSRデータインサイト

金融検査マニュアルが廃止、問われる金融機関の多様な支援

 12月18日、金融庁は「金融検査マニュアル」を廃止した。検査マニュアルは、バブル崩壊後の不動産向け融資を中心とした不良債権への対応を目的に1999年に導入された。過去の決算数値や保証・担保の状況で債権を分類し、貸倒引当金を算出することを規定している。分類は、検査マニュアル「別表」を用いてきた。
 バブル崩壊から27年余を過ぎ、不良債権への対応はすでに収束している。だが、その後の人口減少や高齢化の進展、金融緩和や産業構造による預貸率・利ざやの低下など、金融機関を取り巻く環境は大きく変化し、地域銀行を中心にビジネスモデルの持続可能性が問われている。このため、金融機関は信用リスクを中心とした「ビジネスコスト」を加味し、金融仲介機能の発揮や特色のあるビジネスモデルの実践を迫られている。

 今回の検査マニュアル廃止で、金融機関は融資先の業況の変化や将来を見据えた幅広い情報などで柔軟な引当が可能となる。一方、検査マニュアル導入から20年を経過し、「別表」に基づく引当や償却は定着している。こうした状況を背景に、金融庁は「検査マニュアルの廃止は、これまで定着してきた実務の否定ではなく、現状の実務を出発点にしてより良い創意工夫を進めやすくすることを目的にしている。廃止後も検査マニュアルは金融庁のホームページに引き続き掲載し、金融機関が確認出来るようにする」(担当者)とのスタンスだ。
 引当の柔軟化で金融機関は、財務状況が思わしくない企業への支援も独自の判断で取り組むことが可能になる。この点について金融庁の担当者は、東京商工リサーチの質問に回答する形で、「(検査マニュアル廃止で)リスクがあれば早めに引当を積むことが以前よりやりやすくなった。早めに積めばそれを戻そうとのインセンティブが金融機関に働き、早めに手を打つことが可能になる。金融機関の経営戦略と一致してうまく回れば、早期の再生支援や(抜本再生に向けた)サポートが期待される」との認識を示した。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年12月19日号掲載予定「SPOT情報」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「リファラル採用」 企業の半数に広がる 定着率はリファラルが新卒、転職エージェントを上回る

東京商工リサーチは、採用に関する企業向けアンケート調査を実施した。人手不足やAI・DXの普及で転職市場の活況が続き、近年はリファラルやアルムナイ採用も広がっている。特に、リファラル採用は、転職エージェントの紹介より従業員の定着率が高いと考える企業が多いことがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

大手ホテル好調 客室単価と稼働率が同時上昇 客室単価はコロナ禍の2倍超、稼働率は83.3%

インバウンド需要と国内旅行の復活で、大手ホテルの客室単価と稼働率が、コロナ禍以降で最高を更新した。 ホテル運営の上場12社(13ブランド)の2025年度の客室単価は、1万7,818円(前年度比8.6%増)で前年度より1,424円上昇した。稼働率は83.3%(前年度82.3%)で、高水準を維持した。

3

  • TSRデータインサイト

経営責任を取る事業再生、ジュピターコーヒーは黒字化へ ~ ネクスト・キャピタル・パートナーズ 単独インタビュー ~

2025年度の企業倒産は1万505件(前年度比3.5%増)で、2年続けて1万件を超えた。 こうしたなか、20年を超すファンド運営で事業再生を数多く手掛けてきたのがネクスト・キャピタル・パートナーズ(株)だ。浅野晃司・取締役執行役員に特色や取り組みを聞いた。

4

  • TSRデータインサイト

企業の7.8%で退職金「増額・導入」  「減額・廃止」企業は月給などへ、資産形成は自己責任

これまで「年功序列」や「終身雇用」が前提の日本の会社では、長く勤め上げてまとまった退職金を受け取ることが一般的だった。だが、東京商工リサーチ(TSR)のアンケート調査で、2023年以降の退職金制度は「増額・導入」が7.8%に対し、「減額・廃止」は1.9%だった。

5

  • TSRデータインサイト

サッカーW杯 日本代表を支える40社 売上1兆円以上8社 設立10年未満も

2026年6月11日、米国・カナダ・メキシコの3カ国共催で、史上最大規模のFIFAワールドカップが開幕する。5月15日、日本代表メンバー26名も発表され、関心が集まるなか、スポンサーシップやパートナーシップなど、サッカー日本代表・日本サッカー協会を支援する企業40社を調査した。

TOPへ