• TSRデータインサイト

在日米軍の移転候補地「馬毛島」、政府と地権者の売却交渉が大詰め

 在日米軍施設の移転候補地・鹿児島県西之表市「馬毛島(まげしま)」の売却交渉が大詰めを迎えている。
地権者と政府の所有権の移転交渉は、今年5月の地権者側からの「打ち切り通告」で暗礁に乗り上げていた。しかし、約160億円で政府が買い取る方向で最終調整に入っていることが11月21日、わかった。東京商工リサーチ(TSR)に関係者が明らかにした。
2019年5月、岩屋防衛大臣(当時)は閣議後の会見で、馬毛島の売買交渉の打ち切りに対して、「タストン・エアポート社と、協議を継続し、ぜひ合意を得ていくことが必要だと考えている。そのための努力をしていく」と答えていた。
11月22日、TSRは防衛省へ交渉の進捗などについてコメントを求めたが、締め切りまでに回答は得られなかった。

馬毛島(2009年12月撮影)

‌馬毛島(2009年12月撮影)

所有者は「タストン・エアポート」

 馬毛島は、開発会社のタストン・エアポート(株)(TSR企業コード:942045602、世田谷区)が所有している。
馬毛島を巡っては今年1月、政府がタストン・エアポートから約160億円で取得する仮契約が結ばれていた。しかし、交渉はタストン・エアポートの経営陣の間で意見の相違が起き、5月に打ち切られた経緯がある。その後、タストン・エアポート内の混乱が収束し、10月下旬から再び交渉が加速していた。
21日、関係者はTSRの取材に対して「再交渉でタストン・エアポート側は売却額の上積みを狙っていたが、当初の約160億円で売却交渉がまとまりそうだ。タストン・エアポートと政府側の代理人が最後の調整を進め、早ければ今週中にも仮契約を結ぶ予定」と見通しを語った。

立石建設グループの動向

 タストン・エアポートは、立石建設(株)(TSR企業コード:290199727、世田谷区)のグループ会社で、2018年6月以降、資金トラブルで債権者から破産を2回申し立てられていた。2回の破産申し立てはその後、取り下げられたが、今年10月には、立石建設グループの資金繰り悪化が表面化していた。
売却交渉がまとまると、立石建設グループの資金繰りは改善に向かうとみられる。最終局面に入った売却交渉が予定通り決着するのか、注目を集めている。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年11月25日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ