• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

JDIへの金融支援が振り出しに、INCJは既存支援分を引き上げない方針

 (株)ジャパンディスプレイ(TSR企業コード:294505385、東証1部、以下JDI)は26日、嘉実基金管理グループ(中国)から金融支援を見送るとの通知を受け取ったと発表した。今年4月にJDIが公表したSuwa Investment Holdings,LLC.(以下Suwa)を中心とした支援の枠組みが事実上、崩壊したことを意味する。
 これを受け、JDIの取引先各社は対応に追われた。ある取引先は、「最悪の事態に備えて、社内でシミュレーションに入った」と話す。また、東京商工リサーチ(TSR)には、「近日中の法的手続きの可能性はあるのか」との問い合わせが相次ぐなど、緊張が一気に高まった。

 JDIは今年に入り、(株)INCJ(TSR企業コード:033865507、旧:産業革新機構)から断続的に合計600億円を資金調達している。内訳は、4月19日実行(返済期限2020年12月31日)の200億円、8月8日実行(同2020年8月8日)の200億円、9月3日実行(同2020年9月3日)の200億円だ。本業でのキャッシュ創出力を欠くJDIは運転資金を外部から調達して賄う厳しい資金繰りだ。
 JDIの担当者は26日夕、TSRの取材に対し「9月にINCJから200億円を借り入れており、当面の資金繰りに問題はない。また、Suwaからの資本注入を前提とした金融支援の受け入れは関係各国の出資規制との兼ね合いもあり、もともとファーストクロージングの目途を10月末としていた」とコメント。解釈は分かれるが、少なくとも10月末までの当座資金は確保しているようだ。
 JDIの筆頭株主で、大口債権者のINCJの担当者は26日夕、今年実行した合計600億円の融資の返済について、「(現時点で)期限の利益喪失などで、返済期限前にJDIに返済を求めることはない」とコメントした。ただ、追加の出資や融資については、「現時点で決定したことはない」と述べるにとどめた。

 JDIの最大の取引先である米アップルは、金融支援に前向きな姿勢をみせている。だか、嘉実基金管理グループが予定していた出資を他から得ることが前提となっているとみられる。JDIは代替者との交渉を進めているが、取引先の1社は「金融支援の交渉は二転三転しており、何を信じて良いかわからない。今後の量産や設備投資向けの資金確保に説得力がなく、当面の資金繰りに問題ないと言われても延命にしか見えない」と切り捨てる。複数の取引先がJDIとの一部取引からの撤退や、与信枠を大幅に縮小するなど、事業価値の毀損も止まらない。
 JDIは工場建設の資金としてアップルから受け取った資金の返済繰り延べなどの資金繰り支援も受けており、今後も返済繰り延べは継続するとみられる。ただ、JDIの顧客であるアップルが資金繰りを支援し、外注・仕入先である複数の企業は与信厳格化に動くなど、商流により受け止め方は温度差が大きい。
 INCJは、「裾野の広い業界である日本のディスプレイ関連産業の発展と産業構造の革新を力強く支援」とJDIへの支援意義を強調している。国内の取引先が与信を硬化させるなか、支援意義にどこまで説得力があるのか。JDIの再建迷走は、事業再生の本質を問われている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年9月30日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

ジャパンディスプレイが入居するビル(都内)

‌ジャパンディスプレイが入居するビル(都内)
Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ