• TSRデータインサイト

業者倒産で工事が中断した五輪会場の「有明テニスの森」、 工事は最後の追い込みへ

 東京五輪・パラリンピックのテニス会場となる「有明テニスの森」(江東区)。2018年10月に工事を請け負った会社が倒産し、工事の一部が中断した。前代未聞の事態だったが、“テニスの聖地”と呼ばれる会場の工事を引き継いだ会社が猛暑の中、奮闘していた。
 工事は追い込み段階で、今年9月開催の国際大会「楽天オープン」には間に合う予定だ。
「有明テニスの森」の工事を受注した会社の倒産に、一時はマスコミが取材で殺到した。今、「有明テニスの森」はどうなっているか。東京商工リサーチ(TSR)情報部が取材した。

工事が追い込みに入った有明テニスの森公園(8月撮影)

工事が追い込みに入った有明テニスの森公園(8月撮影)

工事会社の倒産を乗り越え、工事は最終盤へ

 当初工事を受注したのは(株)エム・テック(TSR企業コード:310340748、さいたま市)だった。同社は事業の急拡大で管理体制が疎かになり、昨年10月1日東京地裁に民事再生法の適用を申請し、11月に破産へ移行した。
 工事の完成予定期日は2019年7月だったが、倒産で工事が中断した。テニス会場の一部では、今年9月に国際大会「楽天オープン」、10月には「三菱 全日本選手権」が控えていただけに、何としても完成が急がれていた。
 倒産から3カ月間の中断を経て、東京都は今年1月、改めて2社に残り工事を発注した。
 新たな受注業者は、施設工事が関東建設工業(株)(TSR企業コード:270013334、群馬県太田市)、電気工事が栗原工業(株)(TSR企業コード:570061580、大阪市北区)の中堅会社だった。
 関東建設工業と栗原工業は、隣の「有明コロシアム」の改修工事もJVで請け負っていた。「有明コロシアム」の工事は今年7月に完成。その一部施設は「11月7日から一般利用を再開する」(東京都の担当者)という。 一方、中断していた「有明テニスの森」の工事は、9月28日開催予定の「楽天オープン」に備え、利用スペースを先行して工事を進め、大会には間に合うようだ。全体工事も五輪前の2020年3月までに完成を見込んでいる。
 都の担当者は、「関係者が一致団結して頑張っている」と安どの声を漏らした。

◇   ◇   ◇

 世界が注目する五輪テニス大会の人気会場、「有明テニスの森」が工事半ばで中断という異例の事態に見舞われた。女子テニスの大坂なおみ選手が世界ランキング1位。男子テニスの錦織圭選手は同7位。日本選手が五輪で活躍する舞台に、水を差しかねない状況だったが、関係者の努力で収束に向かっている。
 現場では、完成後のテニス会場のイメージ図を眺める2人の女性がテニス談義で話が弾んでいた。猛暑が続く東京。1年後には夢の東京五輪・パラリンピックが開催される。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ