青森県で倒産が急増、背景に手形割引業者の破産
千代田信用は1958年創業の地場老舗の金融業者。手形割引を中心に事業を展開し、中小企業の資金需要に対応してきた。
地元では「銀行や信金などから資金調達が難しい県内外の企業の運転資金を支援していた。いわば“駆け込み寺”のような存在だった」との声が聞こえてくる。
ところが、千代田信用の破産で同社に資金繰りを頼っていた小・零細企業が、ここにきて連鎖倒産が一気に増えている。
手形交換高は急激に減少
千代田信用の収入は、手形割引の利息と受取手数料が大半を占めていた。千代田信用は割引した手形を、銀行や信用金庫などで再割引し、貸付金の原資を得ていた。
だが、2000年頃から大手企業の決済は手形から現金払いに変わっていった。収入印紙代や管理担当者の人件費などの削減が主な要因だ。これが中小企業にも波及し、全国の手形交換高は、ピークだった1990年の4,797兆円から2018年は261兆円と、94.5%減少している。追い打ちをかけるように過払金の返還請求も増え、金融業者の環境は急激に悪化した。
こうした中、水面下で千代田信用が手形割引し、金融機関で再割引した手形が立て続けに不渡りになる事態が起きていた。千代田信用は再割引した不渡り手形を金融機関から買い戻しを求められる。焦付と同額の買戻しで資金繰りは急速に悪化、千代田信用は破産の道しか残されていなかった。
千代田信用の倒産による連鎖倒産
千代田信用の事業停止時、千代田信用に割引に持ち込まれたが期日未到来の手形が存在していた。判明する限り千代田信用の連鎖倒産は、建設業やサービス業など、小・零細企業を中心に6社に及ぶ。手形の期日が到来すると、さらに倒産が増える可能性もある。
担保不足や財務内容の信用が低く、金融機関から資金調達できない企業は少なくない。こうした小・零細企業の資金繰りを支えてきたのが千代田信用だった。当然だが、依存していた金融業者が倒産すると連鎖的に倒産が広がる。政府の支援策の網からも漏れた企業群だ。昭和、平成に起きた倒産劇が、令和の時代に入っても繰り返されようとしている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年8月20日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)