• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

青森県で倒産が急増、背景に手形割引業者の破産

 青森県で倒産が急増している。青森県の2019年7月の倒産は、前年同月の4件から14件と3倍以上に急増した。その背景を追うと7月1日に事業を停止し、同31日に青森地裁弘前支部から破産開始決定を受けた(株)千代田信用(TSR企業コード:180053388、弘前市)の影響が浮かび上がってくる。
 千代田信用は1958年創業の地場老舗の金融業者。手形割引を中心に事業を展開し、中小企業の資金需要に対応してきた。
 地元では「銀行や信金などから資金調達が難しい県内外の企業の運転資金を支援していた。いわば“駆け込み寺”のような存在だった」との声が聞こえてくる。
 ところが、千代田信用の破産で同社に資金繰りを頼っていた小・零細企業が、ここにきて連鎖倒産が一気に増えている。

千代田信用の本社(弘前市)

千代田信用の本社(弘前市)

手形交換高は急激に減少

 千代田信用の収入は、手形割引の利息と受取手数料が大半を占めていた。千代田信用は割引した手形を、銀行や信用金庫などで再割引し、貸付金の原資を得ていた。
 だが、2000年頃から大手企業の決済は手形から現金払いに変わっていった。収入印紙代や管理担当者の人件費などの削減が主な要因だ。これが中小企業にも波及し、全国の手形交換高は、ピークだった1990年の4,797兆円から2018年は261兆円と、94.5%減少している。追い打ちをかけるように過払金の返還請求も増え、金融業者の環境は急激に悪化した。
 こうした中、水面下で千代田信用が手形割引し、金融機関で再割引した手形が立て続けに不渡りになる事態が起きていた。千代田信用は再割引した不渡り手形を金融機関から買い戻しを求められる。焦付と同額の買戻しで資金繰りは急速に悪化、千代田信用は破産の道しか残されていなかった。

千代田信用の倒産による連鎖倒産

 千代田信用の事業停止時、千代田信用に割引に持ち込まれたが期日未到来の手形が存在していた。判明する限り千代田信用の連鎖倒産は、建設業やサービス業など、小・零細企業を中心に6社に及ぶ。手形の期日が到来すると、さらに倒産が増える可能性もある。

 担保不足や財務内容の信用が低く、金融機関から資金調達できない企業は少なくない。こうした小・零細企業の資金繰りを支えてきたのが千代田信用だった。当然だが、依存していた金融業者が倒産すると連鎖的に倒産が広がる。政府の支援策の網からも漏れた企業群だ。昭和、平成に起きた倒産劇が、令和の時代に入っても繰り返されようとしている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年8月20日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ