• TSRデータインサイト

すてきナイスの元会長ら3名逮捕 不正会計の背景は「創業家のプレッシャー」

平田元会長「幹部のワイシャツは白」と規定、違反者は降格も

7月25日、横浜地検は金融商品取引法違反の疑いで、すてきナイスグループ(株)(TSR企業コード:350011826、横浜市、東証1部、以下すてきナイス)の元代表取締役会長・平田恒一郎容疑者と元代表取締役副会長・日暮清容疑者、元取締役・大野弘容疑者を逮捕した。
これに先立ち、すてきナイスは7月24日、事実関係などを検証していた第三者委員会から調査報告書を受領したと発表した。 すてきナイスは、「本調査報告書に記載の調査結果および提言を真摯に受け止める」としている。
調査報告書によると、不正会計の背景として創業家の影響力をあげている。創業家で元代表取締役会長だった平田恒一郎氏は辞任した2019年5月までグループに強い影響力を有していた。平田元会長が定めた「ワイシャツは白」、「喫煙禁止」、「ゴルフ禁止」などの決まりに違反した役員には降格を命じていたという。こうした強い影響力で意見を述べることすら躊躇する企業風土だったと指摘した。
不正会計は、2015年3月期の通期連結業績を期中に2度の下方修正を避けるため平田元会長が幹部に強く利益改善を求めた。平田元会長は取締役会で「約束した数字ができなければ辞表を出すように」とプレッシャーをかけたという。
そのため、幹部らはあらゆる「益出し」を検討。「マンション」を平田元会長が間接的に支配する会社へ売却し、会計上認められない売上計上が行われたと断罪した。不動産の売却価格は30億円以上で、購入資金はグループ企業が貸し付け、最終的に当期純利益12億円程度を調整したとみられる。 報告書では創業家の支配体制の刷新、ガバナンス(企業統治)、内部統制の不全を指摘。グループ会社やグループ外支配会社を利用した認められない不正な会計処理が行われていたとし、有価証券報告書の訂正も求めた。
横浜地検などの捜査から4日後の5月20日、杉田理之社長は会見を開き「(地検の容疑は)通常取引で粉飾に当たらない」と強弁していた。

すてきナイスグループ本社

すてきナイスグループ本社

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年7月25日号掲載予定を再編集)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ