• TSRデータインサイト

破産したエム・テック 創業者が役員退任後も取締役会を仕切る乱脈経営

 2018年11月20日に東京地裁から破産開始決定を受けた(株)エム・テック(TSR企業コード:310340748、さいたま市、資本金4億6,637万5,000円、向山照愛社長)の債権者集会が、7月3日午後2時よりメルパルク東京(東京都港区)で開催された。
 破産管財人の北秀昭弁護士(北秀昭法律事務所)が、破産理由や破産財団の現状を説明。債権者との質疑応答の後、大きな混乱もなく3時23分に閉会した。
 エム・テックは破綻の数年前から、支払遅延の情報が広く流布していた。集会の参加者によると、管財人は「エム・テックの名前を聞いただけで尻込みする業者が多かった」と述べた上で、これまでのエム・テックの振る舞いが破産後の原状回復や工事承継の妨げになっていることを明らかにした。集会の様子を出席者への取材や配布資料から詳報する。


 債権者集会にはエム・テックの元従業員や債権者など100名以上が出席した。出席者や関係筋への取材でまとめた破産管財人の説明要旨は、以下の通り。

A氏が役員退任後も取締役会を「主宰」

 エム・テックは、創業者であるA氏がほとんどすべての期間において専断的に経営してきた。A氏は2015年9月に代表取締役を退任し、2016年3月には取締役からも退いたが、その後も「社主」や「オーナー」などと称して取締役会を主宰していた。
 人事権や従業員の処遇、役員報酬などの事実上の決定権を持っていた。
 決算内容は、対外的に公表してきた決算書は少なくとも2009年7月期以降は最終黒字、かつ資産超過となっているが、これは不適切な会計処理の結果である。実際には2018年7月期のかなり前から債務超過の状態が続いていたとみられる。
 エム・テックは、2013年7月期から工事収益の計上を進行基準に移行したが、その後も貸借対照表に未成工事支出金や完成工事未収入金を過大計上していた。

エム・テック 売上高・利益推移(公表値)

関連会社と不明朗な資金のやり取り

 A氏が実質的に支配しているとみられる(株)高砂管財(TSR企業コード:314082565)や(株)MIYABI’S(TSR企業コード:314482237)、その他関係会社との間で、事務委託取引や不動産の賃貸借契約、資金融通などを繰り返し、エム・テックの資金を流出させていた。例えば、2017年11月にA氏の指示でエム・テックから高砂管財に1億6,500万円が仮払金名目で出金されている。これを基に高砂管財は、兵庫県芦屋市内の不動産(約160坪)を購入している。

公共工事の前受金を運転資金に流用

 エム・テックは売上至上主義による管理体制の不備や身の丈を超えた重機などへの投資から、資金繰りが悪化。これを取り繕うために、下請けなど協力業者への支払いを意図的に遅らせていた。難癖をつけて不当に工事代金の減額を要求することも少なくなかった。
 また、公共工事の前払い制度(請負額の4~5割)を利用し、前払金を日常の運転資金に流用していた。前払金を受け取った後、関係会社に工事を発注した外形を整えて支払い、それをエム・テックに還流させていた。

自社を中小企業に偽装

 さらに中小企業のメリットを享受するため、実際は従業員が400名を超えていたにもかからず、別会社の(株)エム・テック埼玉本庄工場(TSR企業コード:314177477、社名は当時)に在籍させ、そこから出向の形態をとっていた。

  • TSR注:中小企業基本法では、資本金3億円以下、または常時雇用の従業員300名以下を中小企業者と定義している(建設業の場合)。

入札資格停止が決定打

 エム・テックは、港湾工事の延長許可申請漏れや許可条件違反の工事実施などで、港則法違反で起訴され、2018年5~9月まで地方自治体等からの入札資格が停止された。これにより、資金繰りの拠り所としていた工事前払金を受けられなくなり、資金繰りが急速に悪化した。

A氏に対する破産申立

 エム・テックからの資金流出について、A氏になんら法的権限はなく、高砂管財もそのことを知りつつ受領していたとみられる。違法性が強いものについて、5月24日にA氏と高砂管財を相手に共同不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。また、共同不法行為に基づく損害賠償債権などを基に同日、A氏の破産手続を申し立てた。

主な質疑応答

Q.エム・テックの役員が経営する会社があり、資金が提供されているとの情報がある。
A.承知していない。詳細は別途聞く。

Q.エム・テックの役員に対して免責を条件に事情聴取しているとの話があるが。
A.そのような事実はない。真実をありのままに話すことによって責任を果たしてほしいと言っている。そもそも免責の権限は破産管財人にはない。A氏の独走を許した責任を果たすように言っている。

Q.A氏はなぜ来ていないのか。債権者説明会の時も姿を見せず、一度も謝罪していない。
A.A氏は役員ではないため、裁判所や管財人が呼び出す権限がない。取締役でない人物が経営の中心的な役割を担うのは法律の想定外だ。

Q.赤坂(東京)に豪邸があると聞くが認識は。
A.認識している。高砂管財からMIYABI’Sへ所有権が移っている。高砂管財やA氏へ訴訟を提起しているため、これ以上のコメントは差し控える。

エム・テックの本店(さいたま市)

エム・テックの本店(さいたま市)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年7月5日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「リファラル採用」 企業の半数に広がる 定着率はリファラルが新卒、転職エージェントを上回る

東京商工リサーチは、採用に関する企業向けアンケート調査を実施した。人手不足やAI・DXの普及で転職市場の活況が続き、近年はリファラルやアルムナイ採用も広がっている。特に、リファラル採用は、転職エージェントの紹介より従業員の定着率が高いと考える企業が多いことがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

大手ホテル好調 客室単価と稼働率が同時上昇 客室単価はコロナ禍の2倍超、稼働率は83.3%

インバウンド需要と国内旅行の復活で、大手ホテルの客室単価と稼働率が、コロナ禍以降で最高を更新した。 ホテル運営の上場12社(13ブランド)の2025年度の客室単価は、1万7,818円(前年度比8.6%増)で前年度より1,424円上昇した。稼働率は83.3%(前年度82.3%)で、高水準を維持した。

3

  • TSRデータインサイト

経営責任を取る事業再生、ジュピターコーヒーは黒字化へ ~ ネクスト・キャピタル・パートナーズ 単独インタビュー ~

2025年度の企業倒産は1万505件(前年度比3.5%増)で、2年続けて1万件を超えた。 こうしたなか、20年を超すファンド運営で事業再生を数多く手掛けてきたのがネクスト・キャピタル・パートナーズ(株)だ。浅野晃司・取締役執行役員に特色や取り組みを聞いた。

4

  • TSRデータインサイト

企業の7.8%で退職金「増額・導入」  「減額・廃止」企業は月給などへ、資産形成は自己責任

これまで「年功序列」や「終身雇用」が前提の日本の会社では、長く勤め上げてまとまった退職金を受け取ることが一般的だった。だが、東京商工リサーチ(TSR)のアンケート調査で、2023年以降の退職金制度は「増額・導入」が7.8%に対し、「減額・廃止」は1.9%だった。

5

  • TSRデータインサイト

サッカーW杯 日本代表を支える40社 売上1兆円以上8社 設立10年未満も

2026年6月11日、米国・カナダ・メキシコの3カ国共催で、史上最大規模のFIFAワールドカップが開幕する。5月15日、日本代表メンバー26名も発表され、関心が集まるなか、スポンサーシップやパートナーシップなど、サッカー日本代表・日本サッカー協会を支援する企業40社を調査した。

TOPへ