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「東日本大震災」関連倒産(6月度速報値)

 2019年6月の「東日本大震災」関連倒産は1件(速報値:6月28日現在)にとどまったが、震災から8年を経過して収束傾向が強まるなか、100カ月連続で関連倒産が発生し、累計は1,916件(6月28日現在)に達した。
なお、2019年上半期(1-6月)は20件(前年同期比25.9%減、前年同期27件)で、前年同期より約3割減で推移している

6月の倒産事例

 (有)マルナカ福田商店(TSR企業コード:033141592、青森県)は、鮮魚及び水産加工品の地元の水産会社などに卸し、本社所在地には直売所を設けていた。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災では本社兼直売所が津波の被害を受けた。銀行借入の返済に支障を来して、青森県信用保証協会が代位弁済を行い、東日本大震災事業者再生支援機構へ債権が譲渡された以降、経営再建に注力してきたものの、計画通りの業績を確保できず、資金繰りも限界に達して2019年4月に事業を停止、6月5日に破産開始決定を受けた。

東日本大震災関連倒産 震災後月次推移

 6月の地区別は、東北が1件(青森1件)だった。
累計件数1,916件の都道府県別で、最も多かったのは東京の568件、福岡70件、栃木と群馬が各61件、静岡50件、山形48件、埼玉と大阪が各46件と続く。直接被災地の東北6県の倒産件数は439件(構成比22.9%)だった。
産業別では、最も多かったのが宿泊業や飲食業などを含むサービス業他の507件(構成比26.4%)。次いで、製造業443件(同23.1%)、卸売業350件(同18.2%)、建設業224件(同11.6%)、小売業183件(同9.5%)、運輸業79件、情報通信業64件と続く。
被害型で分類すると、「間接型」1,706件(構成比89.0%)に対して、「直接型」が210件(同10.9%)だった。

東日本大震災関連倒産

震災関連の集計基準

「震災関連」の経営破綻は、原則として次の3つのどれかに該当するものを集計している。

  1. 震災により施設・設備・機械等に被害を受けて経営破綻した(直接型)
  2. 以前から経営不振だったが、震災による間接影響を契機に経営破綻した(間接型)
  3. 震災の影響による経営破綻が、取引先や弁護士等への取材で確認できた(直接・間接型)
  • 集計では、すでに震災前に再建型の法的手続を申請しながら、震災による影響で再建を断念し破産手続に移行したケースなどは、倒産件数のダブルカウントになるため集計から除外している。
  • 「震災関連」の経営破綻は下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」として集計。「事業停止」や「弁護士一任」、「破産手続き中」などの企業は、今後の展開次第で事業再開の可能性もあるため、「実質破綻」として区別した。

倒産の定義(対象:負債額1,000万円以上の法人および個人企業)

  • 会社更生法、民事再生法、破産、特別清算を裁判所に申請した企業(法的倒産)
  • 手形決済などで6カ月間に2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けた企業(私的倒産)
  • 企業が経営破綻により事業継続を断念したが、法的手続きを採らず弁護士などに事後を一任して私的整理(内整理)を明らかにした企業(私的倒産)

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