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それぞれの師走

 多くの企業が仕事納めの12月28日。平成最期の師走は今シーズン最強の寒波が襲来し、風が冷たい。朝一番、東京商工リサーチ(TSR)の中部地方の情報担当者に、「A社が倒産準備をしている」と電話が入った。鋼材事業を営むA社は事業拠点を各地に置くが、本社は東京だ。中部の社員から連絡を受けた東京の情報担当者は早速、裏付け取材を進めた。A社の本社に電話する。呼び出すが誰も出ない。そういえば鋼材関係は今年は27日の仕事納めが多かった。その後の取材でA社も28日から「年末年始休業」と連絡していたことがわかった。代表番号に電話しても応答するはずがない。少し安堵する。だが、確認のためA社の本社に出向くと、本社から4名の人が出てくるところに出くわした。
「年末年始休業」のはずだが・・・。A社関係者とおぼしきラフな格好の男性2人。一緒に出てきた男女2人は弁護士か金融機関か・・・。あくまでもイメージだが。2人を見送った男性に話しかけた。その男性はA社の社長だった。社長に「倒産準備の情報があった」と問いかけると、「再生の動きを誰かがチクッたのだろう。取引先に迷惑をかけない形で再生に向けた相談をしている」とだけ話した。

中部の社員が電話を受けていたその頃、東京の情報部にもまた別の情報が飛び込んでいた。為替取引や事業投資などで資金繰り悪化が伝えられるB社の情報だ。最近は取引先に支払いが遅れ、一部の事業譲渡の噂もあった。27日は電話も応答しなくなった。28日がXデーらしいとの情報も入り始める。B社に念のために電話する。すると男性の声で応答があった。「急激に人が減り、電話対応できないこともあった」と慎重に言葉を選びながら話してくれた。
B社で変化が起きていることは間違いない。B社に急行すると、社員は数人いるようだが活気が感じられない。管理部門の社員が取材に応じ、「社長は出張中でこちらから連絡しても電話に出ない。ほかの役員も来てない」と淡々と話してくれた。「取引先への支払いや従業員への給料が一部遅配している。朝から銀行が2行きて怒られた」とも。年明けの営業はどうなるのか。対応してくれた従業員たちは給料が遅延している。正月をどう迎えるのか。社員の心中を察すると心が重い。大変な時期の対応に感謝する。

今度は昼前。C社が手形を決済できなかったと連絡が入る。C社が公開する決算書が本当なら負債総額は100億円を軽く超える。電話しても留守電に切り替わる。C社は登記上の本社と実質本社が別の場所にある。ふた手に分かれ確認に動く。登記地には会社実態はなく、実質上本社はマンションの一室。お定まりのオートロックだ。インターホンでC社が入居する部屋番号をプッシュする。応答した人にC社か尋ねると、「C社ではありません」と男性の声で応対。すぐにインターホンが切れた。間違えたのか・・・。社長の自宅のようだが、次の一手を考えながらマンションを後にした。 例年、慌ただしい師走は信用情報も駆け巡る。新年に思いをはせる人、仕事に翻弄される人。一人ひとりがそれぞれの思いを胸に年を越す。平成最期の師走も残りわずか。来年は佳き年でありますように・・・。

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