• TSRデータインサイト

「こどもの杜」の職員離職問題、新施設整備費返納の可能性も

 企業主導型保育所を運営する(株)こどもの杜(TSR企業コード:014457954、杉並区)の給与未払い等から職員が大量離職し、同社への2019年度以降の助成費交付が困難な状況にあることがわかった。関係機関によると、休園している施設の再開は絶望視され、今後の運営が注目される。
企業主導型保育所は、待機児童解消を目的に国の保育施策として2016年に開始された。認可外の保育施設だが、施設面積や職員配置等の基準を満たせば国から運営費と施設整備費が交付される。
こどもの杜は、世田谷区に2カ所、川崎市で1カ所の計3か所で企業主導型保育施設を運営。関係機関等への取材によると、11月1日までに世田谷区上北沢で運営する施設で園長を含む全職員8名、同区赤堤の施設で保育士、調理員ら12人の職員のうち10名、2施設合計で18名が一斉に退職した。この影響で上北沢の施設は休園、赤堤の施設は臨時で保育支援員などの職員を補充し、運営を続けている。また、川崎市の保育施設は11月1日付で急遽、渋谷区の企業に運営を譲渡し、職員は新会社で雇用継続している。
企業主導型保育所に助成金を交付する公益財団法人児童育成協会(渋谷区)は、こどもの杜の職員の一斉退職を受け、急遽、退職した元職員にヒアリングを行った。同協会によると、退職した大半の職員が「給与未払いがあった」と証言。同協会はこどもの杜に対し、「任意で賃金台帳の開示を求めていく」としている。
こどもの杜は2019年4月、横浜市保土ヶ谷区に新施設「横浜国大保育園」の開園を告知し、児童育成協会から施設設置に伴う工事費用等の整備費が交付されている。しかし、同協会の担当者は「こどもの杜に新施設の運営能力は乏しい」とみており、「他の企業に事業を譲渡しない限り、開園は現実的でない」と説明。開園予定時期までに譲渡が行われなかった場合、こどもの杜に整備費の全額返還を求めることも検討している。
また、既存施設の今後の運営費交付について、「園児の在園が確認されている限り、継続するが、次年度以降の交付は未定」(児童育成協会)と話す。こどもの杜が運営を継続している赤堤の施設は、報道後に転園や退園する園児が相次いだが、「11月上旬時点で4人の在園を確認」(関係筋)している。
こどもの杜の担当者は11月6日、TSRの取材に「現在、休園している上北沢の施設は至急職員を補充し、体制を整えて11月20日ごろを目途に、園児の受け入れを再開したい」と回答した。だが、同社ホームページは11月9日以降、アクセスできない状態だ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年11月14日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

TSR情報とは

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「倒産発生率」ワーストは京都府 近畿2府4県がワースト10位内、地域の格差拡大

2025年の「倒産発生率」は0.199%で、2024年から0.005ポイント上昇した。地区別は、ワーストの近畿が0.31%、最低の北海道は0.126%で、最大2.4倍の差があり、地域格差が拡大したことがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

新型コロナ破たん、2カ月連続の150件割れ

2月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円未満含む)が140件判明し、2020年2月の第1号の発生から累計1万3,715件に達した。2026年1月は143件で2022年1月の117件以来、4年ぶりに150件を下回ったが、2月も140件と小康状態が続いている。

3

  • TSRデータインサイト

2025年の株主優待「導入」上場企業は175社 個人株主の取り込みが課題、優待廃止は68社に

2025年に株主優待の導入(再導入を含む)を発表した上場企業は175社だった。一方で、廃止を発表した上場企業は68社だったことがわかった。

4

  • TSRデータインサイト

2026年度の「賃上げ」 実施予定は83.6% 賃上げ率「5%以上」は35.5%と前年度から低下

2026年度に賃上げを予定する企業は83.6%で、5年連続で80%台に乗せる見込みだ。 2025年度の82.0%を1.6ポイント上回った。ただ、賃上げ率は、全体で「5%以上」が35.5%(2025年8月実績値39.6%)、中小企業で「6%以上」が7.2%(同15.2%)と、前年度の実績値から低下した。

5

  • TSRデータインサイト

2025年 上場企業の「監査法人異動」は196社 「中小から中小」が78社、理由のトップは「監査期間」

全国の証券取引所に株式上場する約3,800社のうち、2025年に「監査法人異動」を開示したのは196社(前年比43.0%増、前年137社)だった。

TOPへ