• TSRデータインサイト

パイオニア、香港拠点の投資ファンドとスポンサー支援の基本合意

 スポンサー交渉の行方に注目が集まっていたパイオニア(株)(TSR企業コード:291061753)は9月12日、香港を拠点とする投資ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(以下、BPEA)傘下のファンドとの間でスポンサー支援に関する基本合意書を締結した。
再建を模索する中、9月末に返済期限が到来する133億円の資金確保が焦点となっていたが、ファンドからの融資と出資による資金調達で当座を乗り切ることになった。

パイオニアが発行する優先株式をファンドが引き受け、出資を仰ぐ。総額500億~600億円をめどに1株あたりの払込金額はデュー・デリジェンスを経て正式に決定する。ファンドはパイオニアの筆頭株主になる見込み。出資に先立ち9月18日、パイオニアに総額250億円の融資(ブリッジ・ローン)を実行し、運転資金や借入金の返済資金に充当する。
パイオニアをめぐっては9月末に返済期限を迎える133億円の資金確保に向け、複数の提携候補との業務・資本提携話が持ち上がっていた。
12日、パイオニアの広報担当は東京商工リサーチ(TSR)の取材に対し、「今回のスポンサー合意書の締結で、ある程度の資金めどは立った」と話した。今後の基本方針として、第三者割当て実施後も当面、「上場」、「商号・ブランド」、「取引関係」を維持する予定。一方、企業価値向上に向けて必要な第三者との提携は引き続き協議し、ファンドはこれをサポートする。

先週末にグループ会社の売却を発表

 パイオニアは9月7日、(株)デンソー(TSR企業コード:400026295)に連結子会社の東北パイオニアEG(株)(TSR企業コード:210132507、以下EG社)の全株式を売却すると発表。8月にはマレーシアの生産工場の売却など、リストラを加速している。
100%株主の東北パイオニア(株)(TSR企業コード:210024607は、EG社に出向している98名について、「出向中の従業員は基本的に転籍となる見込み。EG社は従来、親会社向けがメインだったが、最近はグループ外向けが中心。人員削減などは予定せず、特に混乱はないだろう」(広報担当者)と話す。

選択と集中でグループ会社や保有資産の売却を進めるパイオニア。今回のスポンサー契約で、当面の資金は確保した。ただ、激変するカーエレクトロニクス分野で生き残るには他社との提携は不可欠との見方もある。
複数の提携候補には自動車部品メーカー、カルソニックカンセイ(株)(TSR企業コード:291139833)や、デンソー、あるいは支援機関など、選択肢は広がる。
ファンドというナビを得たパイオニアの再建に向けた次の一手が注目される。

スポンサー締結のリリース

スポンサー締結のリリース

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年9月13日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ