• TSRデータインサイト

音楽雑誌を発行のグラインドハウス 未払いが表面化

 国内外のミュージシャンのインタビュー、ライブレポートなどを掲載するフリー(無料)マガジン「GrindHouse Magazine」を隔月で発行する(有)グラインドハウス(TSR企業コード:296354708、東京都目黒区)が債務の支払い遅延を引き起こしていることが東京商工リサーチ(TSR)の取材でわかった。
従業員給与や取引先への支払いが一部滞っている。「GrindHouse Magazine」は、2017年頃から発刊スケジュールも乱れている。

代表は著名な音楽ライター

 グラインドハウスは、音楽ライターとして著名なA氏が代表を務め、音楽雑誌の発行やロックイベントの企画のほか、音楽レーベルとしてCD制作なども手掛けている。
A氏は1980年代にフリーの音楽ライターとして独立。世界的な人気ロックバンドの METALLICA(メタリカ)やRED HOT CHILI PEPPERS(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、GREEN DAY(グリーン・デイ)、LINKIN PARK(リンキン・パーク)などをいち早く日本で紹介したことで知られる。
2000年に有料の音楽雑誌として創刊。フリーマガジンへ移行した2012年以降は隔月の発行体制となっている。愛知を中心に複数のFM局で放送のラジオ番組「GrindHouse FM」でパーソナリティーを務めるほか、音楽番組などに出演するなど各メディアで活躍している。

給与未払いで裁判も

 一見華々しい経歴にみえるが、経営するグラインドハウスの資金繰りは厳しいようだ。
TSRが取材を進めると、取引先や記事のライティング業務を委託するライターに未払いが発生していることがわかった。2018年7月には東京地裁からグラインドハウスに元社員1名へ未払い給与227万円の支払いが命じられている。また、CD制作を巡っても、参加したミュージシャンらへの報酬支払いがトラブルに発展しているようだ。
各方面への未払いが発覚する中、グラインドハウスが運営を委託していた公式ホームページ(HP)は、2018年6月を最後に更新が止まっている。関係者によると、入金が2017年春から一度もなく、A氏に複数回にわたり支払いを催促したが明確な説明はなかったという。この関係者は、「支払い額の減額を提案しても対応がなかった」と落胆している。
TSRの取材で、取引先への未払いは少なくとも4社。元従業員への給与未払い金は少なくとも3名にのぼることがわかった。
この他、CD制作に携わったミュージシャンへの未払いを含めると、未払い金の総額は相当な金額にのぼるとみられる。
TSRはグラインドハウスに訪問と電話でコンタクトを試みているが、連絡が取れない状態が続いている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年9月10日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ