• TSRデータインサイト

「イタリアントマト」、10年で100店舗以上を閉鎖

 カフェチェーンの(株)イタリアントマト(TSR企業コード:292219229、品川区)の国内店舗が、2008年からの10年間で100店舗以上減少していることが東京商工リサーチの取材でわかった。

 イタリアントマトは、国内コーヒー大手、キーコーヒー(株)(TSR企業コード:290039142、東証1部)の連結子会社。イタリア料理を全面に出したカフェ「イタリアントマト」を直営とフランチャイズ(FC)で展開している。だが、ここにきて地方を中心に相次いで閉鎖し、10年間で100店舗以上が閉鎖された。
 また、青森県、宮城県、静岡県などでイタリアントマトのFC店とケーキ工場を運営していた(株)ティー・アンド・ティー(TSR企業コード:180168568、港区)、南九州エリアオーナーだった(株)アイ・ティー・ケイ(TSR企業コード:900225408、都城市)が、それぞれ8月6日に東京地裁から破産開始決定を受けた。運営会社の破綻に連鎖し、不採算店の一部も閉鎖に追い込まれている。
 キーコーヒーの担当者は、「既存店の業態転換や不採算店の閉鎖は今後も進める」と話し、さらなる店舗網縮小の可能性を認めた。イタリアントマトの売上高は2014年2月期の約57億7,700万円をピークに減少し、2018年2月期は約40億5,700万円まで落ち込んでいる。
 近年、急拡大しているカフェチェーンとの競合や不採算店の閉鎖が直撃したとみられる。
 イタリアントマトがホームページで公表している店舗数(FC店を含む)は2008年8月に356店(国内328店、海外28店)を数えたが、次第に規模を縮小。2016年には317店(国内267店、海外50店)に減少し、2018年は262店(国内218店、海外44店)と、300店を大きく割り込んだ。特に、国内は10年間で110店舗が減少、群馬県、岐阜県、山梨県は店舗数がゼロになった。

イタリアントマト店舗数推移

 一方、海外のカフェ事業は堅調に推移している。店舗数は、2018年8月現在、44店舗を展開し、中国と香港に39店と集中している。「中国、香港は日本品質のケーキ、パスタの人気が高い。今後も両地域で出店を積極的に進める」(キーコーヒーの担当者)という。

 イタリアントマトは近年、国内で自家焙煎コーヒーとシフォンケーキを売りにした「蔵味珈琲」を積極的に展開。グルメバーガーとサンドウィッチをメインにした「PANES HOUSE(パーネズハウス)」を都内に出店している。キーコーヒーの担当者は、「既存のイタリアントマト店舗をコーヒー専門店に移行するなど、改善策を模索中」と話す。国内市場で試行錯誤を重ねながら、取り組みが花開くまでしばらくは我慢の経営が続く。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年8月17日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)


 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

長渕剛さんの個人事務所、イベント会社に破産申立

歌手の長渕剛さんが代表を務める(株)オフィスレン(TSRコード:295731311、渋谷区)が、イベント運営を委託していた会社を相手取り、東京地裁に破産を申し立てたことが東京商工リサーチ(TSR)の取材で判明した。

2

  • TSRデータインサイト

みんなで大家さん、分配金の支払いが遅延

7月31日、不動産投資商品を販売するみんなで大家さん販売(株)(TSRコード:571226140)は、不動産投資商品「みんなで大家さん成田1号~18号(全18商品)」について、7月末の利益分配(分配金)が遅れると投資家に通知した。

3

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 止まらない客室単価の値上げ インバウンド需要で高稼働・高単価が続く

インバウンド(訪日旅行客)需要に支えられ、ホテル業界は好調が続いている。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2025年3月期の客室単価は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に前年同期を上回り、稼働率も前年同期並で高水準を維持している。

4

  • TSRデータインサイト

私立大学の経営、売上トップは(学)順天堂 赤字企業率5割に迫る、損益は地域格差が鮮明に

私立大学を経営する全国の543法人のうち、約半数の253法人が2024年決算で赤字だった。赤字企業率は46.5%にのぼり、前期(40.8%)から5.7ポイント上昇し、5割に迫った。

5

  • TSRデータインサイト

2025年上半期 20床以上の病院倒産が急増 「病院・クリニック」倒産21件、5年連続で前年同期を上回る

病床20床以上の病院の経営が厳しさを増している。2025年上半期(1-6月)の病院・クリニックの倒産は21件(前年同期比16.6%増)だった。上半期では、コロナ禍の2020年を底に、2021年から5年連続で前年同期を上回り、1989年以降で最多の2009年同期の26件に次ぐ、2番目となった。

TOPへ