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ジャパンディスプレイ、1,070億円のコミットメントラインを更改

 8月8日、経営再建中の(株)ジャパンディスプレイ(TSR企業コード:294505385、港区、以下JDI)は、2017年8月9日に金融機関と締結した1年を期限とする1,070億円のコミットメントラインを更改したと発表した。
JDIは2018年3月期第4四半期(1-3月)の売上総利益(粗利)が赤字に陥り、経営不振が続いていたため、東京商工リサーチ(TSR)にはJDIの取引先からコミットメントラインの更改を心配する声が複数寄せられていた。

産業革新機構が連帯保証

8日午後、JDIがアナリスト向け説明会で明らかにした。説明会には、月﨑義幸・代表取締役COO、大島隆宣・常務執行役CFOらが出席した。
更改したコミットメントライン契約の枠は1,070億円で、期間は2018年8月8日~2019年8月7日。無担保で産業革新機構が連帯保証している。主幹事はみずほ銀行と三井住友銀行で、三井住友信託銀行も参加している。
大島CFO によると、2017年8月のコミットメントライン契約により得た資金は「運転資金と構造改革へ充てた」という。構造改革は前期(2018年3月期)でひと段落しており、今回更改の資金使途は「100%運転資金」(大島CFO)。関係筋によると、1,070億円のうち現在の調達額は880億円程度。残りの枠は、今後の増産や在庫資金に活用するとみられる。

売上総利益(粗利)が黒字転換

同時に公表した2019年3月期第1四半期(4-6月)の連結業績は、売上高が1,032億8,100万円(前年同期比45.2%減)だった。主力のスマートフォン向けディスプレイが得意先の在庫調整などで、欧米向けを中心に落ち込んだ。
利益面は、前期(2018年3月期)に実施した構造改革により製造固定費が低減されたため、前四半期(2018年1-3月期)は赤字だった粗利が11億9,500万円の黒字(同14.9%増)に転換。販売管理費も圧縮したものの、営業利益は98億600万円の赤字(前年同期は144億4,200万円の赤字)を計上。特別利益で、持分法適用会社の(株)JOLED(TSR企業コード:300600798、千代田区)の増資に伴う持分変動利益119億4,300万円を計上した結果、当期純利益は17億7,100万円の赤字となった。

ジャパンディスプレイの開示資料

ジャパンディスプレイの開示資料

9月に単月黒字化

今後について大島CFOは、「フルアクティブの引き合いが強く、2019年3月期第2四半期(7-9月)の売上高は前四半期より40-50%増加する見込み。9月には単月(営業)黒字が見込める」との認識を示した。
月﨑COOは「経営再建中という枕詞を何が何でも今年度中に返上したい」と語気を強めた。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年8月10日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)


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