• TSRデータインサイト

東証1部の田淵電機、事業再生ADRを申請

 東証1部上場の電子機器メーカー、田淵電機(株)(TSR企業コード:570115531、法人番号:3120001102037、大阪市淀川区宮原3-4-30、設立昭和14年12月、資本金36億1181万6596円、貝方土利浩社長)は6月25日、事業再生実務家協会に対し事業再生ADR 手続を申請し同日、受理された。同時に事業再生実務者協会と連名で、すべての取引金融機関に借入金の元本返済の一時停止等を要請した。
また、100%子会社の田淵電子工業(株)(TSR企業コード:260032255、法人番号: 1060001012839、大田原市)と、テクノ電気工業(株)(TSR企業コード:360190774、法人番号:5021001022687、秦野市)も同時に申請し、受理された。一般の取引先および顧客に対する影響はない。

田淵電気(株) 売上高・利益推移(連結))

田淵電気(株) 売上高・利益推移(連結)

 田淵電機は電源装置製造などに強みを持つ1925年(大正14年)創業の老舗メーカー。太陽光発電市場の拡大を背景に、太陽光発電用パワーコンディショナーの製造に乗り出し、2015年3月期は過去最高の売上高532億9900万円(連結ベース)を計上していた。
ところが、再生可能エネルギーの固定買取価格の切り下げなどを契機に、国内の太陽光市場が急速に縮小。業績は急激に悪化し、2018年3月期の売上高は264億1700万円に落ち込んでいた。さらに、在庫廃棄や減損処理などの特別損失も加わり、最終赤字が88億3000万円に膨らんだ。
2018年3月期末は単体で8億2200万円の債務超過に転落し、金融機関と締結している一部の借入契約について財務制限条項に抵触。「継続企業の前提に関する疑義注記」(ゴーイングコンサーン注記)が付記された。
この間、事業構造の改革を進めるなど対策を図ってきたが抜本的な改善には至らず、銀行借入の弁済を約定通り進めることが困難になった。同期末の連結借入金の総額は106億8800万円に達している。

金融機関との協議でADR成立を目指す

今後は7月4日に全取引金融機関を対象に、第1回目の債権者会議を開催する予定。
田淵電機は東京商工リサーチの取材に対し、「対象となる金融機関は12行。再生計画の具体案についてはまだ決まっておらず決定次第、逐次公表する」(IR担当者)とコメントした。金融機関と協議し、事業再生実務者協会の調査・指導・助言を得ながら再生計画案を策定。全取引金融機関の合意による事業再生ADRの成立を目指す。

※事業再生ADR・・・裁判外紛争解決手続の一種。法的手続によらず債権者と債務者の合意に基づき、債務(主として金融債務)を猶予・減免等することで、企業を再建する。倒産とは異なり、一般債権者への直接的な影響はない。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年6月27日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)


 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ