• TSRデータインサイト

府中市「ごみの出し方カレンダー」未配問題、業者は別の自治体でも一部未配

 府中市の「平成30年度ごみ・資源物の出し方カレンダー」の未配問題をめぐり、同市は配布業務を委託したA社に損害賠償を請求する方針だ。東京商工リサーチ(TSR)の独自取材で、A社は府中市以外に複数の自治体の入札にも参加し、別の自治体でも未配問題を起こしていたことがわかった。
未配問題を巡っては、4月11日付で府中市がホームページ上で「市民の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけいたしまして、誠に申し訳ございません」と謝罪した上で、暫定措置として収集予定表を公開する事態に発展している。

1万世帯以上に未配

 府中市が配布業務を委託したのは、新宿区に本社がある広告業のA社。SP(セールス・プロモーション)広告の制作を主力とし、年間売上高は数億円で推移している。
「平成30年度ごみ・資源物の出し方カレンダー」の配布業務は、2017年11月に指名競争入札でA社が136万円で落札。2018年2月8日~3月9日に市内全域への配布が予定されていた。だが、3月中旬以降、市民から「カレンダーが届いていない」との問い合わせが連日寄せられていた。府中市ごみ減量推進課は、市内全域で推定1万世帯以上の未配があったと説明する。相次ぐ苦情を受け、同市は3月中旬、A社に未配世帯への再配布を求めたが、改善策等の具体的な回答はなかった。
A社は2018年3月に同市福祉保健部発注の別の配布委託業務も109万円で落札していたが、今回の未配問題の発覚で同市は別の事業者との随意契約で急場をしのいだ。
府中市ごみ減量推進課は4月末、A社に契約不履行で「最終通告」を送付。さらにA社を2018年5月2日~2020年5月1日までの2年間の指名停止措置とした。だが、「A社から回答がない状況」(同課)で、府中市は近く損害賠償請求に踏み切る構えだ。

葛飾区でも未配

 A社は府中市だけでなく、ごみ回収に関するカレンダー配布業務を請け負った葛飾区でも今年4月、一部未配を起こしていたことが判明した。2月までに配布予定だったカレンダーが2000件以上の未配になっている。TSRの取材に対し、同区清掃事務所担当者は「議会質問が予定されている6月15日までは、今後の措置に関しては話せない」と回答。TSRが都内自治体の入札状況を確認したところ、A社は2016、17年度に両市区のほか、少なくとも立川市、調布市、練馬区、新宿区の入札にも参加している。
6月5日、TSRの取材にA社の従業員は、「この件について答えられることはない」とコメント。府中市と葛飾区は、A社に早急な対応を求めている。

A社が入居するビル

A社が入居するビル

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年6月11日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

M&A総研の関わりに注目集まる資金流出トラブル ~ アドバイザリー契約と直前の解約 ~

東京商工リサーチは、M&Aトラブルの当事者であるトミス建設、マイスHD、両者の株式譲渡契約前にアドバイザリー契約を解約したM&A総合研究所(TSRコード: 697709230、千代田区)を取材した。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業、中高年の活用に活路 「早期・希望退職」は大企業の2.8%が実施

 「早期希望・退職」をこの3年間実施せず、この先1年以内の実施も検討していない企業は98.5%だった。人手不足が深刻化するなか、上場企業の「早期・希望退職」募集が増えているが、中小企業では社員活用の方法を探っているようだ。

3

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

4

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

5

  • TSRデータインサイト

2023年度「赤字法人率」 過去最小の64.7% 最小は佐賀県が60.9%、四国はワースト5位に3県入る

国税庁が4月に公表した「国税庁統計法人税表」によると、2023年度の赤字法人(欠損法人)は193万650社だった。普通法人(298万2,191社)の赤字法人率は64.73%で、年度集計に変更された2007年度以降では、2022年度の64.84%を下回り、最小を更新した。

TOPへ