• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

新日本プロレスが復活、過去最高の業績を更新へ

 アントニオ猪木が創業し、有名レスラーを輩出した新日本プロレスリング(株)(TSR企業コード:291266630、東京都品川区、以下、新日本)の業績がV字回復している。
 2018年7月期の売上高が、ドームプロレス全盛期で武藤敬司や蝶野正洋、橋本真也の“闘魂三銃士”が活躍した1998年の実績を20年ぶりに塗り替える見通しだ。
 娯楽の多様化などで興行収入が落ち込み、5年前は債務超過の厳しい経営状態だった。そこから徹底的に無駄を省き、女性や外国人の顧客を増やした。日々の努力の甲斐もあってわずか5年で無借金経営に大きく改善した。
 今年5月、新社長に玩具大手タカラトミー社長だったオランダ国籍のハロルド・ジョージ・メイ氏を招聘。海外試合や動画配信の分野をさらに伸ばすビジネス戦略を描いている。

満員の東京ドーム 新日本プロレス提供

満員の東京ドーム 新日本プロレス提供

黎明期から成長、成熟を経て混迷時代へ

 プロレスは昭和を代表する娯楽のひとつだった。ビール片手にゴールデンタイムの金曜夜8時、世代を問わず誰もがテレビの前で熱狂した。プロレスのテレビ中継は一流のスポンサーが付き、アントニオ猪木をはじめ、藤波辰巳(現在:辰爾)、長州力、前田日明が黄金時代を飾った。
 その後、“闘魂三銃士”の武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也などのスター選手も活躍。東京ドームや大阪ドーム(当時)を満員にするドームプロレスが開花した。業績も1998年の売上高は39億3,000万円とピークに達した。
 ところが2000年を境にスター選手の離脱、引退が相次ぎ、興行収入が大きく落ち込んだ。そこにPRIDEなどの総合格闘技ブームが若いプロレスファンを侵食。プロレスラーが総合格闘技で敗戦する屈辱もあり、入場者の減少に拍車をかけた。
 人気に陰りがみえるとテレビ放映もゴールデンタイムから土曜日の夕方、そして深夜帯に移動していった。

ユークス支援で1円からコスト削減

 新日本の2005年の売上高は13億円にまで落ち込んだ。苦境に陥った新日本を2005年11月、JASDAQ上場の(株)ユークス(TSR企業コード:571241972、堺市)が子会社化した。
 テコ入れ策の第一弾は企業では当たり前のコスト改善策だった。

  1. 1円でも社長の決裁ルールを設定
  2. 相見積もりの導入
  3. 予算を立て毎月の予実管理
  4. 営業所の削減など財務リストラ

 人気プロレスラーの棚橋弘至など選手も、営業やプロモーション活動に奔走し業績回復に向けて耐えた。コスト圧迫のネックだった大規模会場での開催を止め、中小規模の会場を中心にした興行に切り替えるなど、利益重視の経営に変貌していった。

ブシロードの傘下へ 「プ女子」と外国人

 コスト意識が浸透するなか、2012年1月に(株)ブシロード(TSR企業コード:297133390、東京都中野区、当時:(株)ブシロードグループパブリッシング、後にブシロードが吸収)がユークスの保有する新日本の株式を取得し、傘下に収めた。
 経営改善のためブシロードが支援を強化する一方、株主の(株)テレビ朝日(TSR企業コード:300319002、東京都港区)、大手芸能プロダクションの(株)アミューズ(TSR企業コード:294046062、東京都渋谷区)は新日本所属のプロレスラーのテレビ出演に協力を惜しまなかった。こうしてプロレスラーの知名度が高まると、女性ファンが急増した。“プ女子”という言葉まで登場し、今では観客の3割~4割が女性客という。
 新日本公式動画配信サービスの「新日本プロレスワールド」の会員数は、2018年1月時点で約10万人を誇る。このうち4割が外国人で、アメリカ人のコアファンの加入が目立つという。
 ブシロードが経営権を掌握する直前の2011年の売上高は11億4,000万円で、2013年までは債務超過が続いていた。その後の営業努力とコスト削減の効果は大きく、5年連続で増収を達成、2017年7月期の売上高は38億5,000万円に伸びた。純利益も2億8,000万円を計上し、純資産額は9億3,000万円に回復した。

過去最高の売上更新と新社長就任

 2018年7月期も業績は順調で、過去最高の1998年を上回る増収を見込んでいる。さらに収益も改善し、無借金経営を継続中だ。
 経営再建が軌道に乗り、5月23日には日本コカ・コーラ副社長、タカラトミー社長を務めたオランダ国籍のハロルド・ジョージ・メイ氏が臨時株主総会で新日の新社長に選任された。
 メイ新社長は、「プロレスはあらゆる世代がファンになる要素がある」と抱負を語っている。


 新日本ファン歴28年のTSR社員は、「今の新日本はストロングスタイルが抜け、新しい楽しみ方が増えている」と熱く語る。だが、その先輩はアントニオ猪木、タイガー・ジェット・シン、ハルク・ホーガン時代が最強といまだに信じている。いくつになっても純粋だ!
 どの世代でもプロレスに夢を託してきた。今や市場ターゲットは女性や外国人まで広がり、過去最高の業績を更新する勢いが続く。
 一見、華やかなプロレス興行だが、確かなビジネス戦略に基づく。力道山のようなスーパーヒーローはいない。だが、新日本プロレスは新体制でフロントと現場が一体になり、新たな夢と栄光を築く道を歩き始めている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年6月4日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)


 TSR情報とは

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ