• TSRデータインサイト

レオパレス21、界壁の設置・補修は「1枚あたり15万円」

 アパートのサブリースなどを手掛ける(株)レオパレス21(TSR企業コード:291293581)の「界壁」未設置問題が波紋を広げている。界壁は防火性に関わる建材で、未設置の場合は建築基準法違反になる恐れがある。
 レオパレス21は、「業績に与える影響は、現時点においては軽微」とリリースしているが、取引先などから疑問視する声が東京商工リサーチ(TSR)に寄せられている。

「ゴールドネイル」シリーズなどで不備

 5月29日、レオパレス21は「当社施工物件における界壁工事の不備について」と題したリリースを公表。その中で、1996年~2009年に建てられた「ゴールドレジデンス」など6ブランドのアパートで界壁がなかったり、不十分なケースが見つかったことを明らかにした。6ブランドはこれまでに1万3,791棟施工され、調査を終えた290棟のうち38棟でなんらかの不備が見つかったという。
 これとは別に、1994年~1995年に「ゴールドネイル」、「ニューゴールドネイル」のブランドで展開していたアパートでも不備が見つかっている。この2ブランドで現存するのは915棟。このうち調査を終えた184棟の約9割にあたる168棟で界壁がなかった。

界壁の設置・補修は「1棟あたり60万円」

 5月31日、TSRの取材に応じたレオパレス21の担当者は、「界壁の設置・補修には1枚あたり15万円を見込んでいる。標準的なレイアウトの2階建て10部屋の場合、界壁が4枚必要で、補修に総額60万円かかる。これに伴う引っ越しなどの費用は別途、当社(レオパレス21)が負担する」と述べた。また、「施工業者間で界壁不備の発生率に大きな違いはない」という。
 レオパレス21のリリースを基に試算すると、「ゴールドレジデンス」など6ブランドでは1,807棟(1万3,791棟÷290棟×38棟)に不備が生じている可能性がある。また、「ゴールドネイル」など2ブランドの現存915棟では835棟で界壁がないと推定される。
 界壁不備は8ブランド合計で2,642棟に及ぶことになる。標準的なレイアウトと仮定すると、補修総額は15億8,520万円(2,642棟×60万円)だ。このほか、工事に伴う引っ越し代金などの諸費用をレオパレス21は負担することになる。

レオパレス21の本社(中野区)

レオパレス21の本社(中野区)

 レオパレス21が5月11日に公表した2018年3月期の決算短信(連結)によると、当期純利益は148億円(前期比27.4%減)、期末の現預金は1,065億円となっている。
 今後、確定する設置・補修費と諸費用の負担は「軽微」にとどまるのか。レオパレス21は進捗ごとの開示だけでなく、入居者の安心への配慮も優先すべきだ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年6月4日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)


 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「マレリグループ」国内取引先調査 ~国内の取引先2,942社、影響懸念~

経営不振が続いたマレリグループの持株会社マレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064、さいたま市北区)が6月11日(日本時間)、米国でチャプター11を申請した。東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースからマレリグループの取引先数(重複除く)は国内2,942社あることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

2025年1-5月の「病院・クリニック」の倒産 18件 前年上半期に並ぶ、ベッド数20床以上の病院が苦戦

コロナ禍を経て、病院やクリニックが苦境に立たされている。2025年1-5月に発生した病院・クリニックの倒産は18件で、すでに2024年上半期(1-6月)に並んだ。

3

  • TSRデータインサイト

「日産ショック」とマレリ、部品サプライチェーンの再編含み

マレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064)と主要子会社は6月11日(日本時間)、チャプター11(連邦破産法第11条)を申請した。東京商工リサーチのデータベースによると、マレリグループの国内取引先は全国2,942社に及ぶ。

4

  • TSRデータインサイト

事前調整に明け暮れたマレリHDが再度破たん ~支援プレイヤーの場外乱闘の果て~

マレリHDを巡っては、準則型私的整理の一種である事業再生ADRでの再建を目指したが、海外金融機関の反対でとん挫し、前年の産業競争力強化法の改正で規定された民事再生の一部手続きを省略する簡易再生へ移行した。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

TOPへ