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国税庁運営の「法人番号公表サイト」、検索機能の一部に不具合

 国税庁が運営する「法人番号公表サイト」(以下、公表サイト)の検索機能の一部に不具合が生じていることがわかった。公表サイトでは約460万社の法人番号などの検索が出来る。だが、このうち推計2万社が所在地から商号や法人番号を検索できない状態にある。


 公表サイトでは、「丁目」を算用数字で登録する。例えば「霞ヶ関三丁目1番1号」は、「霞ヶ関3丁目1-1」に変換して登録。所在地から商号や法人番号を検索する時は、算用数字のルールに従うようにサイト上で案内されている。
 だが、商業登記簿の記載ミスや存在しない住所、旧字など外字の認識エラーがあると算用数字に変換できない。その場合、漢数字のまま「三丁目」と登録され、公表サイトのルール通りでは検索できないことがわかった。
 国税庁の担当者は、東京商工リサーチ(TSR)の指摘に対し、「ソフトウェアを利用してクレンジング(データ整理)しているが、置き換わらないとそのまま表示する仕様」と困惑しながら原因の可能性を説明した。
 法人番号は取引先などの情報収集を効率化できる。TSRでは、法人番号と国内企業のTSR企業コード、全世界の企業や事業所を網羅するD-U-N-S ® Number (ダンズナンバー)がリンクし、国内企業を世界に紹介すると同時に、グローバル企業を一元化した情報も提供している。

国税庁「法人番号公表サイト」とは

 法人番号は2015年10月から運用が始まり、1法人に1つ、13桁の番号を付番している。公表サイトでは、基本3情報(商号または名称、本店または主たる事務所の所在地、法人番号)が公表されている。
 国税庁によると、各法人が法務局で登記を完了すると、法務局から国税庁にデータが提供される。国税庁は住所管理のソフトウェアを使用して公表サイトの住所データを作成し、作業は外部に委託せず国税庁で行っている。

住所データ登録時に不具合

 公表サイトは所在地データを一定のルールで加工している。商業登記簿上の所在地が漢数字の「一丁目」は、算用数字の「1丁目」に置き換え、表記も算用数字で統一。公表サイトでも算用数字で検索を求めている。だが、法務局から提供される元データの不備や外字の認識、すでに使われていない住居表示などで漢数字から算用数字に変換できない場合、そのまま登録されており、漢数字の「丁目」が残存する原因になっている。
 TSRの調査では公表サイト全件のうち、所在地が漢数字の「丁目」の登録は約3万社ある。国税庁担当者は、「ルール外の漢数字の丁目が登録されている件数は把握できていない」と説明。「花巻市十二丁目」など地名が「丁目」だったり、ビル名に「丁目」が入るケースもあり、推計2万社が「ルール」外の登録で検索できない可能性が浮上してきた。


 TSRの取材に国税庁の担当者は、「法務省と連携し正しいデータを提供していきたい」とコメントしている。官報の破産や減資などの公告に法人番号が記載されず、まだ行政の連携は十分と言えない。法人番号の利用促進には、より正確で利便性を高めた動きが必要だ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年5月31日号掲載予定「Weekly Topics情報」を再編集)


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