• TSRデータインサイト

大塚家具、9四半期ぶりに最終黒字の可能性も

 9四半期ぶりに最終黒字の可能性が出てきた(株)大塚家具(TSR企業コード:291542085、江東区、大塚久美子社長)。
店舗売上高は不振が続き、今年3月まで8カ月連続して前年同月を割り込んでいた。利益を押し上げたのは固定資産売却益11億1,800万円だ。2年前には110億円と潤沢だった現預金も、2017年12月期は18億678万円まで激減した。それでも大塚家具は無借金経営を続けている。
とはいえ大塚家具は複数の金融機関とコミットメントラインを結び、50億円の借入枠を確保した。その裏付けは金融機関に総額141億5,671万円もの商品在庫などの担保提供だ。
コミットメントラインの締結では、一部金融機関が動産譲渡登記を設定していることもわかった。
大塚家具はなぜ無借金経営にこだわるのか。

会見する大塚社長(3月16日撮影)

会見する大塚社長(3月16日撮影)

9四半期ぶりの最終黒字へ

 5月に公表される2018年12月期第1四半期(1-3月)で、不動産流動化に係る特別利益の寄与で2015年12月期の本決算以来、9四半期ぶりの当期利益の黒字が見込まれる。
この不動産流動化で生まれる11億1,800万円の特別利益だが、大塚家具によると「キャッシュフローに影響しない」という。

全商品を担保提供した50億円の借入枠

 2017年12月末までに、大塚家具は複数の金融機関とコミットメントライン契約を結んだ。これで50億円の借入枠を確保している。その枠と引き換えにしたのは、すべての在庫商品など総額141億5,671万円の担保提供だった。
大塚家具の担当者は、「各店舗や流通サービスセンターに商品がある。移動する場合や入れ替わりもあり商品を限定すると煩雑になり、全商品を担保とした」と説明する。また、「商品は販売されてなくなるものもあり、入れ替わっていくイメージ」と語り、新たな仕入れ商品在庫も担保提供する意向だ。
大塚家具には今年1月4日と3月9日(4月2日登記確認)、金融機関が動産譲渡登記を設定していることがわかった。東京商工リサーチの取材に対し、「(この動産譲渡も)コミットメントライン契約によるもの」と説明した。

大塚久美子社長は決算会見で「利益が計画通りなら無借金継続」と語った。先代の大塚勝久社長時代の1990年後半から無借金経営を続けるだけに、借入には抵抗があるようだ。
だが、積み上がる在庫。減少する現預金。資金調達の準備と無借金経営へのこだわり。
迷走する業績に南青山の新店舗などの新たな事業が風穴を開けるか、動向が注目される。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年4月5日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)


 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ